PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

騎士王国シルヴァード
大陸の東部、バーナード地方の列国、最強の国。
剣王ハルッサムによる安定した統治を受け、現在が史上の全盛期と言われている。

:騎士王国 憩いの広場:
 英霊の聖堂と王宮を通る道の中心に位置する、大噴水で有名な広場。
 この広場から多くの道が放射状に伸びており、その中でも一番盛況なのがここだ。
 様々な露店、出店が建ち並び、シルヴァードで商いの仕事を探すならばまずこの場所まで来いと言われるほどだ。

投稿(件名…騎士王国 憩いの広場)
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GM

 イーディスは大牙の城に向かった。


ホイッスル

イーディス<

「旅から旅の身だから、いつまた会えるか分からないけれど。そのときはまた、お相手を務めさせて頂くよ。
 ああ、そうしたら、私の方も、他の詩人に取られないうちに、君の武勇伝を聞かせてもらわないとね」
 丁重なお辞儀をして、背中を見送る。
「幸運を、未来の英雄殿」


イーディス

ホイッスル<

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ戻らないといけないか」
 広場に響く鐘の音に立ち上がると、振り返ってから
「実力か。確かに焦りすぎってのもあるのかな。きっと。
 試験のときか。とりあえず、今はそのときを待って精進するのみ・・・ってか」
 とホイッスルに笑いかけながら軽くこぶしを作って空を切るように数回繰り出してみる。
「絶対、いつの日にか必ず、あんたみたいな詩人に唄われるような英雄になってやるさ。そのときのために今の話は忘れるなよ。
 と、中々楽しかったよ。あたしはこれから城に戻る。またいつか会えたら、じっくりともっと面白い歌のネタを聞かせてくれ」
 そういって手を軽く振って、そのまま城のほうへと歩き出した。


GM

 と、広場の前にある教会の鐘が、重たい音を響かせていく。
 その音を合図にして、休憩を取っていた徒弟や、職人たちが各々の働き場所に戻っていく。
 昼の休憩が終わりを告げたのだ。


ホイッスル

イーディス<

 にっこりとする。
「こっちの人たちの恵みの母は大地だけど、私たちの場合は、海原だからね。もう、切っても切り離せない縁なんだよね」

「なるほど。そういう物語も、いいね」
 ふと考えるような仕草をして見せて、
「この国は、わりと、実力で判断される部分が強いからね。私の見たところ、君はその点ではまったく、問題なさそうだし、機会さえあればすぐにでも、正騎士になれるんじゃないかな?
 年齢は……まあ、二十は越えているんだろうし。
 今は、若い人が活躍できるような戦はないから、その機会がなかなか得られないかもしれないけれど。
 忍従するのがいいんじゃないかな。
 きっと、すぐにでも、そういう試験の時が訪れるさ」


イーディス

ホイッスル<

「そんなところまで徹底して隠すものか」
 と笑っていたが、ホイッスルの歌を聴き
「・・・シノンか!とすると、やっぱあんたも海の人間か」
 と仲間を見つけたように喜び。
「こっちに来てから、海が恋しくてね。町を出ても地平線まできれいに緑の草原が広がってちゃ、たまには黒にちかい青が見たくなるんだよね」
 そして、彼女の問いに対して
「んー、あたしって分かりやすいのかな・・・」
 恥ずかしそうに頭をかく。
「故郷に帰りたいというわけでは無いな。故郷に帰ってももう何も残ってないしな。
 出かけたいというか、魔物が嫌いなんだ。親を殺されたりしてるからね。だから、どうにかしてその仇を討ちたいんだけど、あたしには魔境にいく力も、おつむも無い。もちろん旅費もね」
 と自分を嘲るかのように笑い。
「だから、この国で騎士になれば、魔物と戦うための武術や対魔物に有効な戦術を学ぶことができるし、任務という形で魔物たちへの仇を討てるんじゃないか、と思ったんだけどな。結局は今もこうして従士として正騎士様のお昼休みが終わって任務に戻るのを待っているなんていう具合だよ」
 そう言ってふてくされるようにため息をついた。


ホイッスル

イーディス<

「当てられても困るよ」
 笑う。
「職業柄、謎めいていた方が良いという所もあってね。
 名乗るのは通り名、性別は不詳、出自は秘密。言葉は、理想的な芝居調子ってね。分からないように努力しているんだ。
 まあ、生まれくらいは教えても良いか」
 それこそ芝居がかった仕草で外套をひるがえさせ、楽器を一つ、掻き鳴らす。

「西に偉大なる霊竜が住まう大森林を称え、東に大いなる地下人の山を見る。
 南には古き名誉の国、北には、茫々とうねる海原。
 その果てにたどり着かんと、緩やかな朝日の下、一艘、また一艘と、小舟が港を離れていく。
 唯一にして無二の海神の奉り手たる、海の王国を発っていく。
 彼らが向かうは竜神の都か、あるいは雪と氷に包まれた蛮族の国か……」
 そこまで語ってから、首を傾げながら止める。
「あまり良い出来じゃないね。故郷を語るのは慣れてないからかな。まあ、こんなところだよ。シノンが、私の故郷さ」

 イーディスの様子を思い返して、ふと訊ねる。
「聞いた感じだと、君は出かけたがっている様子だよね。
 冒険に行きたいのか、故郷に戻りたいのかは分からないけれど」
 違ったかな? と、再度、首を傾げた。


イーディス

ホイッスル<

 自分の故郷を知っていてくれたことにうれしそうな表情を見せる。
「ここと比べたら、ほんと小さな町だけどな」
 と言いながらも声の調子は明るい。
「南方の戦線が進めば、あたしの故郷も魔物の脅威から逃れて、もっと豊かになると思うんだけどな」
 それから、
「あたしはあの町の船乗りの子なんで、大陸を行き来するいろいろな人を見て、冒険者たちの話を聞いて育ったからね。あんたみたいないろいろな国の物語を知っている人を見るとわくわくしてくるんだよ」
 とホイッスルの肩を叩く。
「そういや、あんたの出身はどこだい? あたしはあまり大陸中を旅したわけではないから、お国訛りとかそういう類いに疎くてね。さすがに、姿だけ見て出身をあてることはできなさそうだな」


ホイッスル

イーディス<

「発音の感じとか、雰囲気とかで何となくね」
 何となく神妙な顔をして、頷く。
「色々な物語がありそうだね」

「あそこは、いい町だよね。なんだか、他の町――ここみたいな都会とは空気が違う感じがする」
 いうと、一つ二つ、弦を弾いた。


イーディス

ホイッスル<

 そわそわとした様子を相手に悟られて、恥ずかしさから照れ笑いをしてしまう。
「あっちの話を聞くのが好きでね」
 そして、彼女の予想に驚いた様子で、
「ん? 分かるか? あたしの出身はカルファール。あの港町だよ。あんたは南のほうには明るいようだから知っていると思うが・・・」
 と目を閉じる。


ホイッスル

イーディス<

「それはありがとう」
 再度、ほほえんで、
「なんだか、わくわくしているみたいだね?
 ……ところで、違ったら悪いんだけど、もしかして、君は南の方の出身じゃないのかな?
 何となくね、そう思ったんだけどさ」


イーディス

ホイッスル<

 ホイッスルの情報に驚きを隠せない様子であったが
「確かに面白い。まさか、対魔物戦線の最前線に一国の次期国王があんな場所にいるとは誰も思わないだろうな」
 と、笑うとホイッスルの背中を叩く。
「安心しろ、あたしはそういうことに目くじらを立てる人間じゃないから」
 それから、対魔物戦線の現状について頭に手を当てながら考える。
 騎士団から増援が送られたということ、そして、シーザー王子の所在。ホイッスルの情報が本当なら、あちらはあちらで、いろいろと大騒ぎなんだろう。そう思うと彼女は血が煮えたぎったようにそわそわとする。


ホイッスル

イーディス<

 にこ、とほほえむ。
 同じように南を指さして、
「うん、あっち」

「理由は分からないけどね、吟遊詩人には吟遊詩人の情報源があってね。シーザー王子は、今は遺跡都市にいるはずだよ。
 ……ほら、面白い情報だろう?」
 言ってから、「あ」と呟いて。
「でも、内緒だよ。これ。
 わたしみたいなのがこんなことを触れ回ったなんて知られたら、本当に冗談じゃなく、まずいと思うから」


イーディス

ホイッスル<

「ふーん、それは初耳だ。わざわざ秘密裏にする必要もないだろう」
 足を組み首を傾げる。
「シーザー王子? 王子なら、あのお城の奥かどこかにいるんじゃないのか!?」
 といって、なんら不思議のないような顔で大牙の城の方角を指す。
「いや、そういや、めっきり王子の話題を聞かなくなったな。王族や将軍が何かするたびに、あの城やその周囲で働く奴の間で噂話となって広がるものだけど・・・」
 そして、じっとホイッスルを見つめてから
「あんたはちょうど戦線から帰ってきたところだし・・・。もしかして・・・あっち?」
 広場からは南となる方角を指差しながら、まさか、と信じられないような顔を見せた。


ホイッスル

イーディス<

「まあ、たぶん、将軍自身に何かの思惑があって、おおっぴらにしてないんだろうけどね。いろいろ、想像がつかないこともないけれど」
 考え深げに言う。
 それから、イーディスの反応に嬉しそうな笑みを浮かべる。
「いいね、そういう感じ。
 観客の反応がいいとサービスしたくなる性格だから、こんな仕事やってるんだよね。……ああ、落ちないようにね?」
 そうだね、情報かー。
 と、呟きながら帽子の位置を直す。
「そうだね、わりとあったよ。
 それも、対魔物戦線に関わるような情報だね。
 たとえば……この間、秘密裏に、対魔物戦線への増援部隊が送られたこととかね。まだ若い騎士が、白竜騎士団の部隊を率いて、遊撃隊として向かったそうだよ。
 それに……あと、もう一つあったかな」
 いたずらっぽく笑う。
「かの妖精姫の双子、シーザー王子が今どこにいると思う?」


イーディス

ホイッスル<

 相手につられるように、口元が緩んでしまう。
「まぁ、そういった堅い儀式っぽい振る舞いを信仰しているような騎士ってのも少なくないしな」
 言ってから
「と、むしろ、普通はそうあるべきなのか」
 と、頭をかきながら訂正する。
「まぁあたしは気にしないけどな。よほどの機密事項ということならともかく・・・将軍の武勲なんて必死に隠すほど恥ずかしいことじゃないだろうに」
 自分も歌われるような武勲を立てたいもんだよ。と独り言をつぶやき、同じようにホイッスルの横に腰を下ろす。
「対魔物戦線?あんた、あっちにいたのか!」
 興味津々とした様子で身を乗り出すが、勢いでバランスを失い、あわや噴水に落ちるのではというところで踏みとどまる。
「すまない、つい夢中になっちまった。対魔物戦線の戦況を聞くのがあたしの楽しみでね。まぁ、あっちの話は置いといて・・・どうだい?こっちに戻ってきて、なにか面白い情報を得たとか、そういうのはあった?」


ホイッスル

 何度か、目をまたたかせる。
 長い睫毛が、蝶の羽ばたきのような音を立てた。
 そうしていると、この人物の曖昧な女性が増して見える。

イーディス<

「あ、そうなんだ。
 よかった。
 弓の騎士団の人か何かが、目くじらを立てて来たのかと思ったんだけど、早とちりだったみたいだね。
 筋肉の付き方もしっかりしてるし、ほら、女性みたいだしさ。
 将軍が女性だと、麾下の騎士様にも女性が多くなるみたいだしね」
 あはは、と笑う。
 先ほどまでの仰々しさを、気持ちいいくらいに完全に放り出してしまった様子だ。
「従士さんだったら、あんまり堅いこといわないよね?
 ほら、本人が秘密にしていたい時ってさ、いくらわたしたちの仕事がそういうことだっていっても、怒っちゃう人は怒っちゃうもんだから。
 そういうときに、あんな風に儀式じみた風に装うとさ、結構、はぐらかせるもんなんだよ」
 そういうと、崩した姿勢で、先ほどまで座っていた、噴水の縁に腰を下ろした。
 そして、イーディスの問いに答える。
「いつもじゃあないんだ。
 この前まで、フィアデルト地方にいたんだよ。対魔物戦線の様子をずっと、観察していたのさ。
 状況も膠着してきてて、ちょうど詩の材料も尽きてきたところだし、情報収集と、骨休めに戻って来たんだ」


イーディス

 詩人のしぐさに苦笑いをする。イーディスにとって、堅苦しい振る舞いは苦手の部類だ。
「おっと、名乗るのが遅れた。すまない、なにぶん礼儀作法が苦手でね。いつも怒られてる。
 あたしはイーディス。あたしは剣・・・っといっても従士の身分でな、正確には騎士ではない」
 訂正をすると、恥ずかしがるように、視線を詩人から佩いている二振りの剣へと落とす。それから、ゆっくりと視線をまた戻しつつ
「なるほど、あんたの作か。道理で聞かないわけだ。
 たしかに、ランセル将軍は自分の武勲を決して人に語らない。それはそれで高潔な人柄として尊敬してるけど、それをそのまま表に出さぬままにしてしまうのは惜しい。特にあたしみたいな見習いは帝国討伐戦を知らないしな。
 みんなが知っている詩ばかり歌っていても、何も無い。帝国の次は魔物と騎士たちの戦いもまだ終わらない。こういうときにこそ、あんたみたいな詩人が新しい詩を歌っていくべきなんだろうな」
 詩人をじっと見詰める視線はそのままに
「いつも、この広場で歌っているのか?」
 とたずねる。広場であまり見ない顔だ、と思ったからであるが、大陸中からの人間が集まるこの広場で、行きずりの人物を詮索するのは意味の無いことのように思ったが、それでも彼女の詩人への興味のほうが強かった。


吟遊詩人

 話しかけてきた騎士らしい人物を見返してから、あたりにほかに観客がいないことを確認し、楽器をおろす。
 ゆったりとした服装のせいか、身体の線が曖昧で、この距離で観察しても性別がよくわからない。
 その人物が、立ち上がり、芝居がかった仕草でマントを翻し、お辞儀をしてみせる。

イーディス<

「お褒めに預り、光栄です」
 身体を起こし、イーディスの顔を正面から見る。
 猫目石のような光彩の目だ。
 そうしてから、笑ってみせる。
 なにやら慇懃な口調や、仕草の中で、そこばかりがやけに気さくな、笑みだった。
「これは、私が作った詩ですから。
 騎士様がご存じないのも、無理からぬことでしょう。
 “弓の騎士”は謙虚にして、拘らず、寡黙な方。
 誉むべきもの、謳われるべきものがただ埋もれてしまうならば、それを掘り返し、詩によって高らかに歌い上げることこそ、我々、詩人の責務。そうでなくて、何でありましょうか。
 知られざる武勲を探し出すことは、お家芸ともいえましょう」
 朗々と述べてみせる台詞はやはり仰々しく、どこかその笑顔と不釣り合いだ。
 もう少し、さばさばと垢抜けない姿が本来なのではないか。イーディスは、何というわけではないが、そう感じた。

「時に、騎士様の名はいずれの外衣にありましょうか?
 槍か、剣か、あるいは弓か
 私は、ホイッスル。印はなく、旗も持たぬ、一介の歌い手にございます」



イーディス

 目を細めて聞きほれていた彼女はふと、その目をきっと見開くと、詩人の姿を睨め回すような視線で眺めた。

吟遊詩人<

「いい詩だな」
 おもむろに詩人に声をかける。演奏中の詩人の邪魔をすることを気にもかけない様子である。
「あまり聞かない話だ。あたしも騎士団に所属しているのだが、彼女の武勇伝はまったくと言っていいほど耳にしない」
 吟遊詩人に話しかける一方で、ふと本人すら語らない謎に包まれたベルテ・ランセルの武勇を歌う詩人が何者であるか、と考える。そう思うと、いっそうこの吟遊詩人に興味が強く沸き、イーディスはじっと詩人を見つめた。


GM

 歌は、先の帝国討伐戦を題材にしたものだった。
 シルヴァード、サノット、ピールの連合に、ミノッツが加わる前の所のようだから、まだ戦の初期の頃だ。
 まだ騎士団の一隊長でしかなかったベルテは、客将としてカルノに赴いており、当地の部隊を率いて、参戦していた。
 女性だからと侮られ、歯牙にもかけられない部隊で、ベルテがいかにその統率力を発揮させたか、いかに部隊を掌握したかが、細緻に描写されている。
 ベルテ・ランセルは過去のことは話さないし、話されもしない、歌にも上がらないとあっては、その武勲が表に出てくることはない。同じ騎士団にあるイーディスとても、ほとんど聞いたことがない話だった。

 ……周囲の人々があまり耳を傾けようとしないのは、観客というのは良く知れた話を求めるもので、「異色作」は聞きたがらない性質を持つからだろう。自然、かれらの耳には届かず、より分かりやすく、馴染みのある詩ばかりに注目してしまうのだ。


イーディス

「ん?」
 彼女は吟遊詩人の歌に聞き耳を立てるように立ち上がった。
 歌は嫌いでなかったし、あまり聞かない珍しい歌である。それだけで退屈に毒されていた彼女の好奇心を誘うには十分であった。ましてや、男か女か分からない吟遊詩人の歌声は彼女を余計に引き付けるものがあった。
 少ない観客をすこし意外と思ったが、イーディスはそのまま、吟遊詩人へと近づくと静かに心地よい歌声に耳を澄ますことにした。


GM

 シルヴァードには、大きく分けて三つの騎士団がある。
 それは槍の騎士団、剣の騎士団、弓の騎士団という名を持つ。
 それぞれの騎士団の頂点に、“将軍”と呼ばれる百戦錬磨の騎士がおり、その武勲は、詩人たちによって歌われ、語られている。
 今も、イーディスがくつろぐ少し離れた場所で、一人の詩人が、将軍たちを題材にした歌を吟じていた。
 少しばかり珍しいことであったが、それは“槍の将軍”ではなく、“弓の将軍”のものだった。
 女将軍ベルテ・ランセルが率いる弓の騎士団は、軽騎兵や弓騎兵、投石歩兵や軽歩兵で構成されており、「正面から敵陣を切り崩す」というような騎士団のイメージ(であると同時に、基本的な、旧来の戦の方式)とは趣を異にした戦法を得意としている。
 そのため、華々しさに欠けると思われているのであろう。詩人の歌にされることはほとんどないといって良い。
 大抵は、“槍の将軍”にして“炎の騎士”ハーネス・シードが率いる槍の騎士団の勲詩が歌われ、たまに、“剣の将軍”ゼム・ゼムネスがその代理をするくらいで、“弓の将軍”の名前はほとんど上がることがない。
 だから、イーディスもしばらくは気がつかなかったのだが、確かに、その詩人が歌っているのは、“弓の将軍”のことだった。
 中性的な声は、朗々としていて耳に心地よい。奏でるというより、てん、てん、と時折、鳴らすような楽器の弦の音も、それとない彩りを添えている。
 イーディスは、歌に関して、特に専門的に学んだ訳ではなかったが、この詩人がなかなかの腕前を持っているのではないかということは、すぐに感じられた。
 なのだが、あまり、観客の姿は多くないようである。


イーディス

 昼下がり、一人、日焼けをした女が広場の象徴ともいえる噴水をぼーっと眺めている。
 もっちも、その身なりは男のそれであり、彼女を知らぬものは誰も女だと思わなかったであろうし、当の本人もそれを忘れてしまっているかもしれない。
「あ゛ー・・・暇だ」
 昼の休憩をもらったものの、食事を済ましてしまえばすることもない。することもないと、かえって余計に勿体無く思えてしまうのが自由時間というものである。
 そんなわけで、彼女は――お気に入りというほどではないが――シルヴァードで一番好きな場所である広場の噴水の脇に腰を下ろし、噴水の水を眺めたり、広場を行く大陸各地から集まる人を眺めては、ぼんやりとして時間をつぶしているのであった。


GM

 今、時間は昼と夕方の半分程度の頃だ。
 少々、小腹が空いてくる時間だが、露天商たちは威勢良く、客を呼んでいる。
 早い内に在庫をなくしてしまい、この都で仕入れたものを次の町まで運びに行ってしまいたいのだろう。
 楽士や詩人たちがやってくるのもこの時間帯である。
 朝市に次いで、一番、人の集まるこの時間、広場は、よく賑わっていた。


GM

 今、時間は昼と夕方の半分程度の頃だ。
 少々、小腹が空いてくる時間だが、露天商たちは威勢良く、客を呼んでいる。
 早い内に在庫をなくしてしまい、この都で仕入れたものを次の町まで運びに行ってしまいたいのだろう。
 楽士や詩人たちがやってくるのもこの時間帯である。
 朝市に次いで、一番、人の集まるこの時間、広場は、よく賑わっていた。


GM

 レギウスが指示されたとおりに進んでいくと、なるほど、たしかに「羽を広げた鷲が枝に止まっている看板」があった。よく目立っているので、すぐに判る。
                        移動≫鷲の止まり木亭


レギウス

通行人<

「いやはや、まったく噂通りの大都市ですな。
 鷲の止まり木亭、でしたな。どうもかたじけない。 早速行ってみますわい」
 荷物を担ぎ、教わった方向へと歩いていく。


通行人

レギウス<

「知っているよ」
 ドワーフの姿を上から下まで見て、
「遠くから来た冒険者かい。するとこの都の大きさにはびっくりしたろう」
 と誇らしげに笑う。
「この辺りの一番近くにあるギルドっていったら、『鷲の止まり木亭』だろうな。三番通りを――」
 噴水の向こう側を指さす。
「延々と歩いていくと、羽を広げた鷲が枝に止まっている看板が掛けられた店があるよ。目立つからすぐに分かるさ。
 この時間帯なら冒険者がけっこううろついているからね、迷ったらその辺の人達に聞けばいい。ま、聞き方を間違えて変な喧嘩とかに巻き込まれないようにしなよ」



レギウス

 旅人の身なりをしたドワーフが、噴水の近くに座り込んでいる。
 もそもそと懐から財布を取りだし、中身を覗く。
「はぁ、旅にも思ったより金がかかるのう。 ここまで来れたはいいが、なにか仕事せにゃならん・・・」

通行人<

「失礼じゃが、冒険者のギルドはどこか、ご存知ないかね?」


GM

 ミネルヴァさんが復帰した時、このままここに留まっていた事にも、霧雨さんたちについていったことにも出来ますのでv



シエラ・バゼラード

霧雨<

「はい」
 やかましく聞こえない程度の明るい声でシエラは返事をし、霧雨の後をとことことついていく。

ふたりは商店街へと移動しました。




紫堂霧雨

シエラ<

「では…行くか?」
 霧雨は商店街へ足を向けた。



 
GM

ミネルヴァさんはご多忙のようですので、お返事ができない可能性があります;

 
紫堂霧雨

シエラ<

「…あぁ、間に合うだろう」
何が間に合うのか、霧雨にはよくわかなかったがあいまいな返事を返した。

ミネルヴァ<

今度はミネルヴァの方を向き訪ねる。
「お前はどうする…?」



 
シエラ・バゼラード

(あー・・・、私も商店街には行きたいかも・・・。新しい防具とか、古いのでも修理したいし・・・・。でも・・・、私にはココアが・・・)
 オッシュの作るココアに惚れたシエラは、まずはココアを飲みたかった。
(で・・・、でもここはぐっとこらえないと・・・。霧雨さんの言うとうり私も薬とか消費したし・・・。ギルトにいって商店街に行く機会をなくしちゃうかもしれないし。)
 冷静に考えたシエラは、まずは装備品を整えることにした。

霧雨<

「そうですね、私も商店街にいきます。それからギルトに行っても間に合いますよね」



 
紫堂霧雨

シエラ<

 残った青鷺の剣をチラッと見やり、懐へしまう。
 くるっとシエラを見て。
「俺は商店街へ行く、薬も何も無かったからな…その後にギルドへ行く」



 
シエラ・バゼラード

ALL<

 顔色を伺う表情をしながら、
「これから皆さんはどうするんですか?」
 すこし不安げに、
「私はシルヴァートのギルトに行こうと思ってます。」



 
GM

 シエラ、霧雨、ミネルヴァの三人は憩いの広場へと戻ってきた。
 噴水の前には、当然、クロードの姿はない。
 もう、二度とここに彼が来る事はないだろう。

 
詩人クロード

シエラ<

「そう考えてください」

ALL<

「では…、ご案内します」
言って、クロードは先だって歩き出した。

舞台はシナリオ8「虚無の楽園」へと移行します。



 
シエラ・バゼラード


しばらく霧雨が見ていたところをぼーっと見てから
シエラはクロードに視線を戻した。

クロード<

「分かりました、あなたの家にいけば依頼の内容がわかるのですね?」
と、怪訝な顔で念を押した。

ALL<

「それでは行きましょう。」



 
紫堂霧雨

「…分かった」
短い返事と共に、顔がクロードへと向くが。
(……ん?)
シエラの視線を感じ、そちらに少し顔を向ける。
微笑んでいるシエラの表情に一瞬の戸惑いを感じ、顔を強張らせるがすぐに無表情へと戻り。

シエラ<

「……なんだ?」
と、睨んでいる訳ではないのだろうがそう見えてしまう表情で訊ねる。



 
詩人クロード

シエラ<

「はい、ミネルヴァさんと、これからそのお話をするために、私の家に向かうところだったのです。

ALL<

「ですから、依頼を受けていただくのなら、家まで来ていただけないでしょうか…」



 
シエラ・バゼラード


何をするかわからないと聞いてまた怪訝な顔をクロードに向けたシエラは

クロード<

「何をすればいいんですか?」
と聞いてから彼女からぼーっとしてるしか見えない霧雨が目に入る、
(何を見てるんだろう?)
いっしょになって霧雨の見てる方角を一見して
(空・・・しかないですよ?でも綺麗な空ですね)
と心の中で呟いて霧雨に微笑んだ。



 
紫堂霧雨

空を見上げながらも目線はクロードを向く。
(詩人どのの依頼…果たしてどんなものか…
そして、信用できるものなのか…)
微かにフッと息を吐く。

 
ミネルヴァ・ラ・ルーラ

シエラ<

「私にもまだわからないの。
これからそれを聞こうとしているのだけど……」



 
紫堂霧雨

ミネルヴァ&クロード<

クロードとミネルヴァに軽く会釈する。
「……………」
なんともなく空を見上げる。
(…良い空だ)
端から見ると、ただボーっとしているようにしか見えない。



 
シエラ・バゼラード

クロードの怪訝な顔を見て我に帰ったシエラは、

クロード<

「いえ、なんでもないです。」

(ちゃんと見えてるんじゃない)
と思いながら首を振って言った。

ミネルヴァ達<

「それで?私達は何をすればいいんですか?」
と首を傾げながら言った。



 
詩人クロード

ミネルヴァ<

「はい」
頷いて微笑みかける。
「信じます」

紫堂霧雨<

「……お願いします」
一礼を返してから、シエラの奇妙な視線に気が付く。

シエラ<

「あの――私の顔が、如何しましたか?」
怪訝そうな表情で見返す。



 
ミネルヴァ・ラ・ルーラ

クロード<

「そうね……」
(企みがあれば、ギルドの名は出さないはず。ギルドを敵に回すほど危険なことはないのだから……)
「大丈夫だと思うわ。信じましょう」

ALL<

「協力をお願いします。よろしく」



 
紫堂霧雨

ミネルヴァ&クロード<

「む・・・・・・・」
シャ・ラに注意され、クロードとミネルヴァの方に顔を向ける。
「腕には自信がある…どんな依頼でもこなしてみせよう…」
鋭い眼光で、一見睨んでいるかのように二人を見る。
(…いかんいかん、ここで依頼者に突き放されては困る…信用がすべて)
今度は二人をじっと見続ける。



 
シエラ・バゼラード


シャ・ラ<

「はぁい、気をつけます。」
と、言って、始めてクロード達を見た。
(ミネルヴァさんか・・・、強そうだなぁ。)
(クロードさんかぁ・・・、目が見えないんだなぁ・・・、でもちゃんと
瞳動いてるのに・・・・。)

ミネルヴァ&クロード<

「はじめまして、シエラっていいます。」
と、一拍置いて言った。そのときもクロードの目が気になってしょうがないようだ。



 
詩人クロード


ミネルヴァ<

「わたしには…、人を見ることは出来ません」
インデイト達の様子を見て、それからミネルヴァに告げる。
「あなたに、裁量をお任せしてよろしいでしょうか?」



 
冒険者インデイト


ミネルヴァ<

「インデイトだ」
一言だけ告げて、黙り込む。

クロード<

黙ったまま視線をクロードに向けて、その憔悴した様子に、眉を動かす。
(かなり、参っているようだな)
この詩人が抱え込んだ事態というのは、かなりの難事かもしれない。

ミネルヴァ&クロード<

「シャ・ラが言ったとおり、オッシュの紹介で来たのだが、冒険者の手助けを求めていると聞いた」
言って、シエラや霧雨の様子を見、密かに息を吐く。
「あまり信用出来ないかも知れないが、良ければ手伝わせてもらえないか?」



 
冒険者シャ・ラ


ミネルヴァ<

「わたしはシャ・ラ。よろしくね、ミネルヴァ」
にっこりと微笑んで挨拶を送る。

シエラ&霧雨<

「こういうときに、あまり気を散らすもんじゃないのよ〜」
子供を叱るような口調で二人に言う。



 
ミネルヴァ・ラ・ルーラ

声をかけられて振り向くと、4人の冒険者がいた。

シャ・ラ<

「ええ。私はミネルヴァ。よろしく」

クロード<

「ギルドの紹介なら、問題ないと思うけど…」



 
シエラ・バゼラード


シエラはぽぉーっと広場を眺め、
「賑やかな場所ですねぇ・・・・。」
と呟やいた。
 そして、噴水に目をやり
「わぁ、地下から水が噴出すってこういうことなんですねぇ・・・」
と感心した。
(こんなの初めてみたぁ〜)
その間、シャ・ラやクロード達のやりとりは彼女の目には入っていなかった。


 
紫堂霧雨


クロード<

「・・・・・・・・・・・・・」
無言でクロードを見る。
(こいつがクロードか…そして)

ミネルヴァ<

今度はミネルヴァの方に顔を向ける。
(…先客か?)

だが、その二人よりもまず霧雨の関心を向かせた物は。
(…ここは賑やかだな)
回りの景観をキョロキョロと眺める。
(…賑やかな場所は苦手だ……)
終始無言、かつ無表情であった。



 
冒険者シャ・ラ

金髪のエルフが、ミネルヴァとクロードを呼び止め、首を傾げて言う。

クロード<

「ギルドのオッシュに紹介されて来たんだけど……。詩人のクロードさんって、あなた?」

ミネルヴァ<

クロードに問い掛けてから、彼の隣にいたミネルヴァを見て、微笑みかける。
「あなたも同業者かしら?」



 
GM

そうして、二人が歩き出そうとしたちょうどその時、四人の冒険者がやって来た。
エルフが三人と、黒装束の男が一人。

シエラ、霧雨、シャ・ラ、インデイトの四人が憩いの広場に到着しました。



 
ミネルヴァ・ラ・ルーラ

クロード<

「わかったわ。歩くのはなんでもないから。
それじゃ、行きましょうか」

話しにくい用件らしい。
詩人の後について、彼の家へ向かうことにする。



 
詩人クロード

優しく渡された言葉に、神経を張り詰めさせた時を送り続けていたクロードは、ふと、疲弊した心を暖めてくれるものを感じた。
(この人なら、大丈夫かも知れない…
なんとか、出来るかもしれない…)
安堵する。
安堵と同時に大きな脱力を感じながら、ミネルヴァを改めて見上げた。

ミネルヴァ<

「ここでは、少し、話せません。
もしよろしければ、私の家まで来ていただけますか?
郊外にある林の中なので、少し、歩くのですが…」
無理な笑顔は消し、自然な視線と共にミネルヴァにそう言った。



 
ミネルヴァ・ラ・ルーラ

無理に微笑む顔を見ているうち、妙な義侠心が湧いてきた。
実はこの広場を通るたびに、この詩人の演奏を聴くのを密かに楽しみにしていたのだ。なんとなく他人事とは思えなくなってしまった。

クロード<

「そう。よければ話してくれない?
私はね、こう見えても冒険者なの。もしかすると、協力できるかも」



 
詩人クロード

演奏しながら、しかし自分の中に没頭していたクロードは、不意にかけられた声にびくりと身体を震わせた。

ミネルヴァ<

「あ――、あなたは」
ミネルヴァの姿を見て、良く自分の演奏を聴きに来てくれていた人物だと気付く。
「…ははは、お見通しですね。
ええ、少し…、色々とありまして」
端正な顔に陰鬱な影を落とし、クロードは無理に微笑んだ。



 
ミネルヴァ・ラ・ルーラ


街を歩くミネルヴァ。街での生活にもようやく慣れてきた。
最初は違和感もあったが、慣れればそれなりに暮らせるものだ。

広場に来ると、おなじみの詩人が琴を弾いている。
だが、今日はいつもと少し様子が違うように思う。
一曲弾き終わるのを待って声をかけた。

クロード<

「こんにちは。いつも美しい曲ね。
でも、今日のはちょっとテンポが速すぎなかった?
なにか、焦っているような感じだったわ」



 
詩人クロード


今日も憩いの広場に訪れた。
噴水の石囲いに腰を下ろし、
脇に帽子を置いて、聴き賃を入れられるようにして、琴をかき鳴らす。
集まってきた人だかりの中に、無意識に視線を彷徨わせ、
冒険者の姿を求めてしまっていた。
無論、居ない訳は無い。それどころか群集の数割は冒険者である。
しかし、自分の求めているような者は、その中には見えなかった。

胸中<

(…時間が無い。もう、時間が無い。
間に合わなければ、私一人だけでも行かなければならない…。
しかし、…おそらく、無理だろう。
私だけでは無意味で、しかし、助力は、誰にでも求められはしない。
…誰か、いないのか…)
思えば思うほど、
琴の弦を爪弾く指の動きは、激しく、焦りを混じらせて行った。