PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

大魔術師王国イ=サード
ロトッカ地方の大国、自然を重んじる緑の国。
若王セイフレイが統治する。彼は緑色の賢王と呼ばれており、
その名に恥じない素晴らしい政を行っている。

:大魔術師王国 竜追いギルド:
 竜追い達を知識面で援助することをモットーに運営されているギルド。
 通常の冒険の援助に加え、大陸各地に派遣している調査員から得た情報を提供している。
 ほとんど無作為に情報を集めているために情報が混沌とあふれかえっている状態で、尋常ではない量だ。創造竜に関する情報から、地方の遺跡・怪異に関する情報まで幅広いものだ。
 イ=サードの竜追い達は、三日に一回はここを訪れて、情報を吟味するようだ。
 一緒に経営されている宿も竜追いは格安で宿泊することができる。

投稿(件名…大魔術師王国 竜追いギルド)
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ギルド張り紙




フラックの様子を見て、手で誘ってギルドをあとにする。 イズミは叡智の塔に移動します。


フラック

 しばらくぼんやりと何か考えてたが、泉に聞かれてはっと気がつく。

泉<

「うん、行ってみるよ!
 ドラゴン見るの楽しみだなあ」
 もうすぐにドラゴンを見られると思いこんでいる。


GM

 ノトたちは東門へと移動していった。


イッサ

ノト<

「ああ、行ってこい。気をつけてな!」
 ノトと、アルバたちを手を振って見送る。


ノト

アルバ<
 
「はい、行きましょう!」
 うなずいて出発する。
 
イッサ<
 
「なんだか慌ただしいことになっちゃいました。
 また戻ってきたら顔出しますね。
 じゃあ、行ってきます」



ギルド員イッサ

泉<

「ああ。とりあえず、困ったときには受付の人間に聞くといいさ」



ギルド員<

「受付の女の人に、『キムナード地方に詳しい人は誰?』って聞いてみるのですね?」

 鸚鵡返しに忘れないように言葉にする。
 フラックの方を向いて尋ねる。

フラック<

「どうする?これから午前中に叡智の塔に行って見る?」

 リュンクスの子供の頭を撫でながら答えを待っている。


ギルド員イッサ

泉<

「ん? ああ。叡智の塔には行ったことがないのか」
 あごに手を当てる。
「それだと、何だな。ふむ。
 ……だれがいいだろうなぁ。
 うーん、おれもあんまりよく知らないんだが、とりあえず受付の女の人に、『キムナード地方に詳しい人は誰?』って聞いてみるといいんじゃないかな。
 たぶん、適当に手が空いていて、それなりに人当たりの良い導師を教えてくれるんじゃないかと思う」



ギルド員<

「叡智の塔・・ですか?」

 どんな所だろう?
 ちょっと怖い気がする。

「叡智の塔に行きます。あの・・・何方を訪ねれば良いのでしょう?」

 不安そうに聞く。


フラック

イッサ<

「うわさ話かあ……それなら本当にいそうだね!」
 普通ならうわさ話と聞くと眉につばをつけるところだ。
 フラックは心からわくわくしている。


アルバ

ノト<

「よし!」
 アルバも準備を終えている。
 といっても、アルバもノトと同様、荷物を抱えただけだが。
「ウォークとシーニアは先に西門から行かせておいた。わたしたちは西門から行こう。騎士団を隠れ蓑にするなら、目立たない方がいいだろうから。道中で合流すればいいだろう。
 では、出発しよう!」

 特に問題がなければ、出発するために東門へと移動することとなる。


ノト

アルバ<

「はい、僕は部屋の荷物さえ持ってくれば。すぐ取ってきます。」

 部屋に戻り、荷物を持ってすぐにまた降りてきた。

「いつでも行けますよ。」


アルバ

 ノトの台詞を聞いて顔を上げる。
 そして、しばらくぽかんとしていたが、やがて破顔した。

ノト<

「名案だ!」
 がたんと立ち上がって、ノトの肩を小突く。
「それは思いつかなかった。
 なるほど。確か、もうすぐ出発するはずだ。
 ノト、準備はいいか、すぐに出られるか?」


ノト

 ノトは少し考え込んでしまっていた。
 アルバに提案されたことをではない。いかにこの局面を安全に乗り切るかを。
 そしてふと我に返る。その瞬間にひらめいた。

アルバ<

「あ! アルバさん、急いで出発の用意をしましょう。
 騎士団が討伐隊を出すタイミング、同じ時に僕達も出発するんです。そうすれば、奴らもうかつには動けません。本当に上手くいけば、うっかり動いたところを騎士団にやっつけてもらえるかも。そうなれば、後方の憂いは無くなります」

 リゼルが出て行ってどれくらい時間がたった?
 出発は間に合うか?


イッサ

泉<

「ああ、聞いたことがある。具体的にどの場所とかどんな奴等なのか知らないが。
 ただ、酒場の噂話程度だけどな。冒険者の間じゃあ、そこそこ噂になっていることがあるくらいだな。
 それこそ、叡智の塔ででも聞いてみたらいいんじゃないかな?」



ギルド員<

「ええっ、飛竜とか、獅子とか、小さい頃におとぎ話で聞いた生き物が本当にいるならば、見てみたいと思います。
 えっと、飛竜を使役している人たちって本当ですか?知りたいです。」


ギルド員イッサ

泉<

「飛竜か」
 驚いて目を白黒させる。
 それから、うなずいた。
「なるほど、まあ、そういう奴もいるな。
 俺は見たことはないが、南方の……どこかっけか。どこかで日常的に使役している奴もいるそうだしな。
 なんだ、竜が好きなのか?」
 神の眷属でもある竜が好きでも嫌いでもなかろうが、とりあえず聞いてみる。


フラック

泉<

「どらごん!!!!」
 ぱーっ!!と目を輝かせて叫ぶ。
「みたい!ボクもみてみたい!
 うわあ、嘘、竜人の人もみたことないけど、飛竜もいいね!すごくみたい!よし、見に行こう!」



 暫く黙っていたが、ようやく考えを口に出す。
 命令されることに慣れているイズミは自分の考えを述べるのはあまり得意ではない。

フラック&ギルド員<

「あの・・・飛竜って見たことあります?いや、どこかで聞いたことあります?」

 交互に二人の顔を見る。

「わたし、見てみたいんです、飛竜を・・・」

 言ってしまった!


アルバ

ノト<

「まあ、もっともかも知れないな」
 嘆息する。
「ここであの盗賊を逃したのは痛かったな。私たちは顔を見られている。いや、もともと箱を見張っていたのだとすれば、既に見られていたと考えるべきか」
 考え込む。
「……決めるか。
 1.狙われていることを覚悟しながら旅をする
 2.箱の依頼は一度取り下げてもらう
 当面、できるのはこんな程度か?
 君はどうしたい、ノト」


ノト

アルバ<

 残念がるアルバを見て、ノトも残念そうにため息をつく。
「そうなんですよね…。まだ解らないこともいっぱいあるのに…。」
 ほとんど独り言のようにつぶやきながら少し考え込む。
 そこでアルバから質問され、
「あ、はい! 大丈夫です。」
 笑顔で返事をする。が、すぐに真顔に戻って話し出す。
「少し考えたんですけど…。
 その盗賊団ですが、黙って退治されるのを待っているでしょうか…?
 昨日、仲間が捕まったことは奴らも承知しているわけでしょ?
 僕が奴らなら、とりあえずアジトって言うか…拠点は移動してますね」

 一息ついてアルバを見る。そして続ける。

「で、問題はこのパーティが襲われた理由です。
 たまたまだったなら、もう奴らに襲われることはないでしょう。
 ですが、例えば、昨日の話のように僕らが持っている依頼の品が理由だとすれば、奴らの出方は微妙ですね。
 諦めてくれるか、どうか」


イッサ

泉<

「大した依頼はないかもな。
 なかなか割はいい、荷物の配達っつう依頼はあったが、あいつらが請け負ったしな」
 と、ノトたちを示す。


フラック

泉<

「ふっふーん。腕輪なんてもらったのはじめて!」
 よろこんで腕に通す。
「風尾のフラックに風の腕輪、ぴったり!」
 めったに(思い出したときにしか)名乗らない二つ名と一緒にほこらしげに宣言する。

「次どうしよっか。ボクはなんでもいいけどなー」




 ギルド員に再びミルクを催促すると、もらってリュンクスに飲ませ始める。

フラック<

「へえ・・・フラックさんの腕輪もすごい!
 お互いがんばった甲斐があったね。」

 リュンクスの子に目を戻すと頭をちょっと撫でてみる。
 しばらく飲む仕草を見ていたが思いついたように、

ギルド員&フラック<

「さて、これから次は何をしようかな?」

 何とはなしに、ぽそっと言ってみる。

 イズミ自身としても、やりたいことがないわけではないが周りの意見も聞いて見たい。


アルバ

 ノトの話を聞いて、非常に残念そうな顔をする。

ノト<

「そうか、彼女が決めることだから仕方ないが。正直、残念だなぁ」
 ため息をつく。
「なかなか面白い旅路になりそうだと思ったが。
 まあ、仕方ないか。
 君は大丈夫かな?」


ノト

アルバ&ウォーク<

「おはようございます」
 アルバとウォークに挨拶を返しながら、食べかけのパンを飲み込む。

「実はリゼルさんなんですが……」
 今先ほど出て行ったリゼルについて、二人に説明をする。


イッサ

泉<

「へえー、なんだか面白そうな生き物だな」
 なんとなく、ただの猫じゃないことに気がつく。
「それがお前さんへの贈り物か」

フラック<

「あー、あー。あるある。大丈夫大丈夫。分かった分かったちょっと待て」
 おざなりにあしらいながら、向こうから腕輪を持って来る。
「ほら、こいつだ。よく分からんが、風の力があるだかなんだかで、ダーツとか投げナイフが勢いよく飛ばせるんだそうだ」


フラック

泉<

「リュンクスかー」
 よく分からないなりにうなずいている。
「いいなペット。猫欲しいな」
 うずうずとしながら覗いている。

イッサ<

「えっ? 嘘! ボクのもあるの!?」
 わいわいはしゃぎながらイッサにまとわりつく。



フラック<

「リュンクスの男なの」

ギルド員<

「おじさん、この子にあげるミルクください。
 トレニトさんからのプレゼントなんです。
 あっ、それとフラックさんのプレゼントありましたよね?」



 大事そうにリュンクスの男の子を懐の中に入れる。
 ちょうど顔がでるようにする。

 フラックの所に歩いて行き、嬉しそうな顔で話す。

フラック<

「ほらっ、トレニトさんからのプレゼントがこの子なの!
 フラックさんにもトレニトさんから届いているみたいよ。ギルドの叔父さんに聞いて見て。」

 フラックのプレゼントって何なのかな?
 フラックと一緒にギルド員の所に歩いていく。


フラック

泉<

「おっはよう〜」
 挨拶をしながらめざとく猫を見つける。
「わお!何それ!」


GM

 上から、あくびをしながらアルバが起きてきた。
 すでに旅立ちの準備をしているウォークも一緒だ。

「おはよう」
 アルバがノトに声をかける。
「リゼルはまだ起きていないのか?」


ノト

イッサ<
 
 お酒について訊かれると少し照れくさい。
「ええ、僕はどうもお酒に強いみたいで…」
 
 アルバ達が起きてくるまで、ゆっくり朝食を食べていることにする。


リゼル

ノト<

「せっかく一緒になれたのにゴメンね。
 何処かでまた会ったら宜しくね。それまでごきげんよう。」

 すまなさそうにノトの顔を見る。

 捨て子のリゼルにとって離別は何時ものこと・・・
 生きていてお互いに掛け合う言葉があるだけ幸せと思う。

 イッサに軽く会釈すると衛視の詰め所に急行する。

 リゼルは衛視の詰め所に移動しました。


リュンクス

泉<

「…………」

 あまり言葉がまだよく分かっていないようだ。
 きょとんとして、泉の顔を見返している。
 それから、何となく理解したらしく、小さく鳴き声を返す。

 男の子らしい。

 一緒にいることになる、の辺りは首をかしげている。
 後1週間〜1ヶ月は育ってからでないと、ちゃんとコミュニケーションを取るのは難しそうだ。



 羊皮紙の内容を読み終えるとフラックが階下に降りてきたのを目の端で見つける。
 軽くフラックに手を振って合図を送る。

フラック<

「フラックさん、こっちです」

 そして再びリュンクスに目を移す。

 さあて、そうとなればちゃんと自己紹介しなければね。

リュンクス<

 丸まっているリュンクスを両手でそっと持ち上げると、目と目が合う位置まで持ち上げて顔を見つめる。
 猫語で話しかける。

「おはよう、ぼく。それとも彼女かな?」

 しばらく間をおいて、さらに話しかける。

「あたし、イズミって言うの。これから貴方とずっと一緒にいることになるの。
 これから宜しくね。」

 さて、どんな反応が返ってくるのかな?


フラック

「ふあー」
 あくびをしながら降りてくる。
 珍しく朝がおそい。

リゼル&ノト&イッサ<

「おはよー」

 泉はいないのかな……?と、きょろきょろ周りを見る。


イッサ

リゼル<

「ふぅむ、やれやれ」
 困ったように頭をかくが、やがて肩をすくめる。
「まあ、そうしたいんなら、そうすりゃいいやな」
 荷物の運搬はアルバたちに任せるか……と、つぶやく。
「そんなら、まず衛視の詰め所に行けばいい。
 確か、兵を集めてから、詰め所で拘留している賊を引き取って、それから討伐にいくだとか聞いたからな」

ノト<

「ああ、了解だ。
 そろそろ、アルバも起きてくるんだろうが……。
 あいつは酒が強くないくせに、好きだからな。
 結構強いのをやっていたから、ちょっと寝坊するかもしれん。
 ……おまえさんは、平気そうだな?」


ノト

 イッサに渡されたパンとスープを美味しそうにつまみながら、リゼルとの会話から状況を把握する。
 なるほど、昨日の盗賊が身元を吐いたか。
 しかも、リゼルさんは盗賊退治に一緒に行くと…。

リゼル&イッサ<

「僕は、アルバさん達と一緒に行きますよ。
 正直、こっちから打って出るのは得意じゃなくて…」

 少しすまなそうに、苦笑ともとれる笑みを浮かべながらパンをかじる。


リゼル

ノト<

「あっ、ノトさん、おはようございます。
 今日も、宜しく」

ギルド員<

「うーん、どうしようかな?
 目前にある討伐に興味が引かれるなぁ・・・」

 しばらく考えてみてから結論を出す。

「アルバさんたちには悪いけど、わたし、やっぱり討伐に参加します。
 騎士団にはどういったら良いのか教えてください。」

 きっぱりと言う。


イッサ

ノト<

「よう」
 起きてきたノトにも声をかけ、パンとスープの準備をする。
 こちらに興味ありげな様子を見せる彼に、料理の載ったトレイを置いた。

リゼル<

「アルバたちはまだ起きてないな。
 シーニアは早々と目を覚まして、今は風に当たりたいとかで外に出て行った。身体はすっかり良いらしいな」
 それから、リゼルの提案に眉をひそめる。
「おいおい、本気か?
 そうすると、アルバたちとは多分別行動になるな……。
 フラックがどうするかは知らんが、少なくとも騎士様が討伐を終えるのに三日は掛かるだろうし」

ノト<

「お前さんはどうしたい?」


リゼル

 若い女性に会釈されたので会釈して返す。

 席を立ってイッサのところに行きパンとスープを受け取って再び席に腰掛けた。

 食事をしながら話す。

イッサ<

「盗賊退治ですか・・・どうしようかな・・・
 アルバさん達はどうするとか言ってました?」

 何故自分たちが盗賊に襲われる必要があったのか、その理由を知りたく思う。
 騎士団と一緒に行けば直接問いただすことも可能だろう。
 受けている依頼にも直接的に関係してくるかも。

 それに・・・それにシルヴァードにいた時は騎士たちは常に身近な存在であった。
 彼らの持つ雰囲気に慣れているというのか、やっぱり好きなのかな。

イッサ<

「わたし、騎士団と一緒に行ってみようかな?」

 ちょっと真剣な眼差しになってイッサを見る。


GM

 羊皮紙には、次のように書いてあった。

「イズミ、この子猫を君へ。
 少し前に、奴等に襲われていたところを助けた。
 親猫はすでに息絶えていた。
 私が面倒をみるつもりだったが、恐らく君の方が適任だろう。
 重荷であれば済まないが、そのときはイッサに託してくれ。彼はこれまでも犬や猫を育てている。
 リュンクスは魔法の力を秘めてはいるが、大して変わるところがあるわけでもないから、あの男でも大丈夫だろう」


リュンクス

「……」
 目をしばたたかせて、それから言葉にもならないもごもごとした鳴き声を上げると、また丸くなった。



「かっ、かわいい!」

 思わず小さく感嘆の声が漏れる。
 猫語で挨拶する。

「今日は、起こしちゃってごめんね」

 やさしくリュンクスに微笑みかけると驚かせないように静かに羊皮紙の切れ端を取り上げ、何が書いてあるのか読んでみる。


ノト

 少しずつ外が賑やかになってくる。
 朝の気配を感じてノトも体を起こす。
 昨日のお酒も残っていない。いい目覚めだ。

 身支度をして降りていくと、リゼルがすでに座っている。
 スープとパンがおいしそうだ。

リゼル<

「おはようございます」
 挨拶をしながらノトも席に座る。
 そして、リゼルやイッサの話に耳を傾ける。
 何かあったのか?


猫?

 柔らかなクッションの上で、小麦色の毛をした仔猫のような生き物が丸くなって眠っている。
 籠を開けられた拍子に目を覚まし、瞬きをしてから、泉を見返す。
 エメラルドのような瞳と、額に光るルビーの輝き。

 知識判定:幻獣
  泉:辛うじて成功!


 泉は、この猫のような生き物が“リュンクス”と呼ばれていることを知っている。山野に時たま見かけられる、魔法の力を持った生物だ。
 今は、きょとんと泉を見ている。

 仔猫の脇に、羊皮紙の切れ端が置かれている。


GM

 泉が見たところ、籠の外には特に変わったものはない。
 なんだか、クルミのような香りを感じる。

 籠を開けると……



イッサ<

「ええ、フラックさんには声をかけていません。今から起こしに行きます。
 その前に、わたし宛のプレゼントをちょっと見てみようかな。」

 リゼルにちょっと会釈するとイッサが言った場所に行き籠を見つける。
 丁寧に籠を取り上げると近くのテーブルまで持って行きその上に置く。

「何かな?」

 トレニトからのメモやメッセージがないか、籠の外側を一通り調べて見る。
 あれば読むことにする。

 ゆっくりと籠を開けて中を見ると・・・


ギルド員イッサ

泉<

「よう」
 軽く挨拶を返し、あわただしい朝の準備に戻る。

 ………。

 ………。

 ……。

 はた、と。
 何かを思い出したらしく、泉のところへやってくる。
「そういや、トレニトから妙な籠が届いてたぞ。
 例のプレゼントらしい。
 中身は分からん。“イッサは触るな”と書いてあったからいじっちゃいないが。とりあえず厨房の脇においといたから、後で見ておきな。
 フラックには妙な腕輪が送られてたが……あいつはまだ起きてないのか」

リゼル<

「あったぞ」
 ほい、とスープとパンを出しながら答える。
「お前さんたちが捕まえた賊の一人が、身元を吐いたそうだ。
 南東の森を根城にしている盗賊団らしいな。今日の昼にも、騎士様が兵を率いて退治にいくそうだぜ」


リゼル

 朝のようだ・・・

 ふう、もう起きようか。

 昨日はいろいろあったし、今日はどんな一日なのだろう?
 今日一日の可能性を信じて、がんばろう。
 自分に気合を入れた。

 てきぱきと身支度をして階下のフロアーに降りていく。

 先客がいるようだが、適当な座席に座るとギルド員に声をかける。

ギルド員<

「おっはよう!
 なんか、変わったことある?
 お腹減っちゃった」

 挨拶程度に聞いて見る。
 別にびっくりするようなニュースを期待しているわけじゃない。



 朝の雰囲気を感じて静かに起き上がる。
 そうだ、トレニトさんからのプレゼントが来ているかも・・・

 急いで身支度をすると階下に降りていく。
 ギルド員を見つけて挨拶をする。

ギルド員<

「お早うございます。」

 期待に満ちた趣でギルド員の返事を聞く。


GM

 やがて、夜は更け、そして朝が来る。


ノト

 アルバが二階へと引き上げていくのを見て、ノトもそれに続いた。

イッサ<

「ごちそうさま。美味しかったです。じゃあ、また明日」

 先ほど荷物を置いた部屋に戻り、眠る。
 明日はこの新しい仲間と新しい出発…子供のようにワクワクしながら…


GM

 ノトさんの行動後、特に夜に何もないようであれば、朝が来ます。


フラック

泉<

「りょーかーい。
 ボクも寝ようかな」
 さくさくと切り上げて部屋に戻る。


アルバ

ノト<

「そうだな」
 自分自身、結構飲んでしまったことに気がついて、頷く。
「そろそろ寝るとするか」

イッサ<

「ご馳走さん。
 また、明日払わせてくれ」
 千鳥足、というほどではないが、全身に心地よい酔いが行き渡っている。
 気だるそうに立ち上がり、二階へと引き下がる。


イッサ

ノト<

「おいおい、大丈夫か?」
 と、ノトがぶっ倒れるんじゃないかと、様子を見守る。

 抵抗判定:毒物(酒)・一気呑み/多量
  ノト:優秀な成功!


「……大丈夫なようだな。
 麦酒みたいに飲んじまいやがって。大したもんだ」


ノト

 ジョッキで出されたカクテルをうれしそうに飲む。
 ノトは、その見かけからは想像されにくいが、自他共に認める酒豪である。どれだけ飲んでも酔いつぶれたことがないのがひそかな自慢でもある。
 つまり、少々きつめのお酒であろうとも…

イッサ<

「いやぁ、スゥって入っていきますよ。飲みやすいなぁ」
 のどが渇いていたためか、かなりの急ピッチで飲み干してしまった。

アルバ<

「おかわりっ、と行きたいところですけど、明日早いんですよね?
 この辺にしといた方がいいですかね?」


ギルド員

ノト<

「すまん! 遅くなった!」
 接客やら何やらで、注文を出すのが遅くなってしまった。
 詫びながら、かなり量をサービスして、大きなジョッキでカクテルを出してくる。
「飲めるか?
 飲み易いから、飲み過ぎちまいがちなんだよな」

泉<

「おう、了解だ。
 二階の廊下、東側は今夜はどれも開いてたな……階段を上がって三個目の、右手側の部屋を使いな」



 なんだか、眠くなってきたな。
 もう、寝ようかな。

フラック<

「フラックさん、アタシ、何だか眠くなってきました。」

 ゆっくりと腰をあげて、ギルド員に合図を送る。

ギルド員<

「すいません。今晩泊めてください。
 もし、荷物がトレニトさんから届いたなら、明日朝に受け取りますから」

 ギルド員から寝室を教えてもらうのを待つ。


フラック

泉<

「うーん、どうしようかなー。
 とりあえず買い物をするけど。
 なんか面白い依頼があったら受けてみるかな」
 とりあえず、贈り物が気になってしょうがないようだ。



ギルド員<

「ありがとう」

 発泡酒を一口二口すすって見る。

「ふうー、落ち着くな」

フラック<

「ええ、贈り物って何でしょうね?
 鷹が運べるものだから、そんなに大きくはないのでしょうけど」

 勲章とか、そんなもの?
 ちょっと想像してみたが、すぐにやめた。

「ところで、フラックさんはこれからどうするの?」


リゼル

 今日一日の出来事の夢を見る。

 ギルドでのテスとの出会い、そして街道での戦闘、勝利とシーニアの負傷。
 戻ってきて、ノトのパーティ参加。

 リゼルはさまざまな夢を見た。

(申し訳ないです、一部修正してしまいました。
 なお、途中で多忙などで参加中止された方がいる場合、まさしく“夢”のごとく、「最初からいなかった・途中で事情があって離脱した」とかで処理します。
 復活した場合は、「実はずっと一緒にいた」「いつの間にか戻ってきていた」とか(笑))



アルバ

ノト<

「ほう」
 じゃあ、次は私も同じものをもらおうか、などとつぶやいている。
 と、泉から挨拶を受けたので、杯を上げて返礼する。



ノト

アルバ<

「実はですね、飲みたいカクテルがあったんです」
 赤瓜の果汁にブランデーを混ぜたカクテルだ。
 昼間ジュースを飲んだ時に、夜になったらこのカクテルをもらおうと決めていた。

 ギルド員イッサにカクテルを頼もうとしたら…どうやら新しいお客だ。
 イッサとも知り合いらしく、なにやら話している。
 話が終わるまで待っていると、そのうちの一人から挨拶された。
 にっこり笑ってノトも挨拶を返す。

泉<

「こんにちは。」

ギルド員イッサ<

「僕にも、飲み物を…例のカクテルを下さい。」



ギルド員

泉<

「あいよ」
 発泡酒の小瓶を持ってきて、瓶ごとテーブルの上を滑らせる。

フラック<

「お前さんは果汁でいいかい?」
 一見、子供でしかないハーフリングをからかってそんなことを言う。

 - 中期シナリオ達成! -

泉:
 SP4.5
 BP3.5
 PP3.0

フラック:
 SP4.5
 BP3.5
 PP3.0




ギルド員<

「ええ、大変でしたけど、フラックさんに手伝ってもらって無事に任務を遂行できました。
 流石に疲れました。私たちにも何か飲み物を頂けますか?」

 先客らしい二人の男性の方を見て、軽く挨拶する。

ノト&アルバ<

「今日は」


フラック

ギルド員<

「へええ、情報はやーい」
 驚きながら金袋を受け取る。
 にっかりと笑う。
「毎度どーも」

泉<

「贈り物ってのも楽しみだね」


リゼル

 はあー、今日は色々あったな・・・・

 深呼吸を一回、出来事を思い出している内に寝てしまった。


ギルド員

 ノトたちと交わしていた杯をおいて、二人を出迎えに行く。

イズミ&フラック<

「おう、お疲れさん。
 話は聞いているぞ、トレニトから鷹で手紙が届いててな。
 よくやってくれたな。
 ……とりあえず、報酬を渡しておこうか。
 前金の残りと、追加報酬だ」

 二人に、それぞれ金の入った袋を渡す。

 イズミ:585Rdを得た!
 フラック:585Rdを得た!

「あと、トレニトから贈り物があるらしい。
 手紙と一緒には運べないからっていって、後からまた鷹が来るそうだ」


フラック

ギルド員<

「ただいま〜。帰ってきたよ〜」


イズミ

 竜追いギルドの扉を開けて、ゆっくりと中に入っていく。

 先客かな?
 ギルド員と何人かの人物を確認する。

ギルド員<

「無事に戻ってきました。」

 任務を達成できた安堵感で、僅かに微笑んでギルド員を見る。


アルバ

ノト<

「もちろんだ」
 既に酒で満たした杯を上げて、迎える。
「もっとも、あまり遅くならないようにしないとな。
 明日も早めに出発する予定だからな。
 さて、何が良い?」
 何を飲むか、と問う。
 大魔術師王国の酒の名産は葡萄酒だが、アルバが飲んでいるのは、それの蒸留酒だ。相当強い酒であり、既に目の回りが赤みを帯びている。
 イッサの方はまだギルドの開いている時間だからか、果汁で酒を割ったものを飲んでいる。


ノト

アルバ<

「二階の一番奥ですね。わかりました。では…」

 二階の部屋へ上がる。
 だが、荷物を置いてすぐにまた降りてきてアルバのところへ。

「実は僕も、少し飲みたかったんです。そろそろ日も沈んだ頃だし、いいですよね?」

 言いながら椅子に腰かける。どうしてか、照れくさそうな笑顔だ。
 言葉の半分はギルド員のイッサにも向けられていた。


リゼル

「二階に行こう。」

 アルバに軽く会釈して、荷物を担ぐと二階に上がっていく。

 部屋に入って辺りを見回す。

「シーニアさん、寝ているのかな?」

 シーニアは先に寝床に入り、既に眠っているようだ。

 あまり詳しく状況を確かめることもなく、空いているベットを見つけて、服を着たまま「どーっ」と横になる。風呂に入らなければ・・・そう考えている内に睡魔に襲われてしまう。

「まっ、いいか」


ギルド員イッサ

リゼル&ノト&アルバ<

「おー。お帰り」

リゼル<

「風呂。
 二階に荷物を置いて、寝る前に汗を流しにいったみたいだな」


リゼル

 竜追いギルドの扉を開けて、中に入っていく。

「ただいま〜」

 テスさんたちは、どこかな?
 室内を見回して、他の仲間を探す。

 ギルド員がいたら聞く。

ギルド員<

「あれっ?テスさんやウォークさんは何処ですか?」


ウォーク

テス<

「夢と魔法ですか」
 破顔する。
 もちろん冗談としか受け取っていない。
「魔法でできているのはしっくりきますが、夢とは驚きですね」
 にっと笑う。
 レッスン、といわれてテスを注目する。
 と、突然ウォークが光の球を放ち、ほうってくる。

「えっ」

 何も考えずに両の掌で受け止めようとする。
 ぽん、と受け止めた。
 そして、光の球はウォークの手の上で漂い、わずかに弾み、光を皓々と放つ。
 と、意表をつかれていて色を失っていたウォークの目が、正気を取り戻す。目の前のものを魔法だと認識する。
 刹那、光の球はウォークの制御を離れ、存在を保っていられず、軽い閃光を放って四散した。

「……」
 ウォークはぽかんとしている。


テス

ウォーク<

「才能か…そうかも知れんね。こう見えて俺は、夢と魔法で出来てるんだ」
 冗談交じりに返しながら、続きを聴く。
 親が導師か。言いにくい事もあるだろうに、こうして語ってもらえるのは有難い。
 …しかし、問題の大元は考えていたより別の所か?
 話し終えたウォークは顔を扇いでいる。もう真っ赤だ。
「…ふむ」
 顎に手を当てる。聴く限り、こいつの能力を疑う必要はない。
「まあ、そうだな。塔のやり方に拘る必要は無いだろう。あれは研究と同時に、より多くの人々に魔術を広める為の施設になった。時にはやり方に合わないやつもいるさ」
 …あれ? 昔の塔のことなんて知らんのだがな…いや、それはともかく。
 どうもおかしい。魔力があり、基礎理論も学んでいるはずなのに結果が出ない。
 理論、構築、発動…
「…魔力の流れが阻害されている?
 …どこで?
 …体内?」
 思考を巡らせる。口に出していたのが、自分の声だということに遅れて気づく。
「…あー…うん。ウォーク、レッスン2。方法は一つじゃない、時には理論を飛ばしてみろ。だがイメージは明確に」
 言いながら、自分の魔力を小さな光球に仕立て上げ…ウォークに向けて放る。
 無害ではあるが…受け取れるか?


ウォーク

テス<

 ほう、と感嘆を漏らす。
「魔術書から独学ですか! 才能があったんでしょうね」
 湯で顔を洗うと、犬のように頭を振る。
「いや、実はおれはこれでも魔術師の家に生まれたんです。
 母親は導師、父親はその道では知られた研究者で、小さい頃から勉強はたたき込まれてきたんですが、どうにも魔術ばっかりは使い物にならなくて。
 蝋燭に火をつけるっていう修行、ご存じです?
 塔に入学した学徒が、魔術理論の基礎を学んだ後、全員がやる修行なんですが、言うなれば試験ですね。
 これをパスすると実践的な理論を学んでいけるんですが、おれは何回受けてもうまくいかない。だもんで、母親が塔に頼んで、パスしたことにして、一応上級の授業に参加はしてるんですけど、やっぱりうまくいかない。
 導師曰く、おれにも魔力はあるそうだから何かの切っ掛けがあればちゃんとできるようになるだろうってんですが。
 で、テスの場合はどうだったのかと気になりまして。
 後は、もし師匠が塔以外の魔術を学んだんなら、塔じゃないやり方でも上手くいくっていうわけですし、それならおれも塔以外の場所でなら上手くいくかもなと」
 あっさりと真っ赤になった顔を手で扇ぐ。
 まるで悩み相談のようになったが、あっけらかんと話している。


テス

ウォーク<
 
「いや、一昨日湯を使ってる」
 最後に泊まった小さな村を出て、この街に入るまでが、確かその位だったな…と思い出す。
 先の戦いでは多少転がったが、幸い、脱いだ衣類はウォークほど汚れてはいなかった。
 この程度なら小魔法で片付けられるだろうか。

 まあ、多分、問題ないだろう。

 …奥においやられた肌着たちは、持主にしっかり洗ってもらおう。
「ま、そうぼやくなよ。汚れの分だけ経験は積んでいるんだ」
 
 後に続いて入った浴室は、湯気で落ち着いた雰囲気を醸している。
「…なんだ、熱いのが苦手なのか」
 身体を流す。それ程熱いと感じた訳でもないが、どうやらウォークの方は違ったようだ。
 つい口をついたらしい言葉に、湯船へ浸かりながら返す。
 
「…ふう」
 …湯に落ち着くと、何故だか溜息が出る。
 解いた髪を弄って遊んでいると、隣から声がかかった。
「俺の魔術…?」
 また答え難いことを、と唸る。…そうした質問をずばりとついてくる辺り、素質は大いにあると思うんだが。
「そう、だな……ふむ。実際の所、殆ど我流なんだがな、俺のは」
 言葉を選んで話し出す。
「昔の魔術師だか誰だかの遺した本を読んで、試しにやってみたら使えたんだな、魔法が」
 記憶の奥底に刻まれた知識を拾い上げる。もっとも、初めはただ光って消えるだけのような代物だったんだが。
「だから、魔術体系こそ現代の分類に基づいてはいるけど、詠唱や術の構成なぞはほぼ我流…特別何処でっていう訳じゃない」
 言葉を選ぶ…ああ、うん。ウソはついてないな、恐らく。
「…しかし、その本だかを遺したのも術者ではあったんだろうし、何らかの形で塔に関わりがあったかもしれないな」
 話し終え、ぐ、と身体を伸ばす。
「それにしても、何だってそんなことを?」


ウォーク

テス<

 鼻をうごめかせる。
「テスはそんなことはないんじゃないですか?
 もっとも、シーニアにいわせればおれは自分の臭いすらも分かっちゃいないことになるわけですが」
 笑う。
「テスも三日振りですか?」
 手早く服を脱ぎ散らかし、脱衣所の隅にある籠の中に押しやる。その際、土と汗にまみれた肌着を恨めしそうな目で見る。
「どうして服って奴はこうも簡単に汚れるんでしょうね?
 おれは一休みする前に、庭で汚れ物を片づけなきゃならなさそうですよ」

 浴室に進みつつ。
「そういや、ここは風呂で有名なんですよ。
 普通の冒険者にとっては重要でもなんでもないですが、一部の連中には好まれてますね。
 ……ちょっと熱いな」
 ウォークはとにかく暑がりで、風呂が好きではないのもそのあたりに由来する。水浴びならいいのだ。川遊びとか。
 テスも湯に落ち着いたら、気になっていたことを聞くことにする。
「そういえば師匠。質問が。
 テスはどこで魔術を学んだんです?」


テス

 シーニアの声に立ち止まる。すっかり眠り込んでいるものと思ったが。
 起きていたのか、起こしてしまったか、どちらにせよ…びっくりした。いやほんとに。
 ふと隣を向き、釘を刺された弟子を見る。
 
ウォーク<
 
「…なあ、俺達そんなに臭ったかな?」
 
 
 …ぐるり、と言うほど回ってはいないが、ともかく建物の周りを歩いた先に浴室はあった。
「…ふむ」
 思わず声が漏れた。思っていたより凝っている。
「宿としての機能が主ではない、と言ったが…これは撤回しなきゃならんな」
 風呂を好む者であれば、わざわざここを選んで泊まることもあるかもしれない。
 もっとも、今ここにいるのはそれほど風呂が好きという訳ではない二人だが。
 
「…三日ぶりの風呂には、少しばかり贅沢すぎるか?」


GM

 浴室は一階の裏手にある。
 細長い通路が、ギルドの建物の外周を半周ほどしており、その奥にレンガ造りの浴室がある。
 床を掘り下げて石を敷き詰めた、中程度の大きさの浴槽が一つあり、熱い湯をたたえている。

 ラームナードには入浴の習慣があるとはいえ、城郭に備え付けられているものの他は公衆浴場が主だ。
 その中で、この魔術師の国のギルドは贅沢な設備を持っているといえた。


シーニア

 眠っているかと思われた(テスは夢の香りさえ感じていた)シーニアが、ふっと口を開く。

テス&ウォーク<

「入浴するなら、たっぷりと石鹸と湯を使って洗うこと」
 特にウォーク、と釘を刺す。
「三日分の入浴をすませるまで、この部屋にいれないからそのつもりで」


ウォーク

テス<

「りょうーかい」
 にっと笑って、ゆっくりと箱をチェストにしまい込む。
 そのままテスと部屋を出て行く。


テス

ウォーク<
 
「好奇心旺盛なのは結構だが」
 ウォークの様子に口を開く。
「壊してくれるなよ」
 肩を竦めて、相手の持つ箱を指す。
「…少なくとも、依頼の間はな」
 まあその…俺だって中身が見たい。
 
 用意された部屋は、思ったより狭くなかった。差し込む光に、つい欠伸が出る。
「…くあ…さっさと済ませよう」
 旅装を解き寝台の一つに置くと、軽装の身軽になった身体で隣の寝台を見る。
 シーニアが寝ていた。落ち着いた様子の彼女に少し目を細め、ウォークに向き直る。
「…さて、行こうか」


GM

 アルバたち3人は町の裏の丘に移動した。

 テスとウォークは部屋の前まで来る。
「ここですよ」
 通路の一番奥の部屋の扉を開く。

 部屋は広くもなく狭くもない。簡素な寝台が六つばかり並んでおり、その一つにシーニアが目を閉じて横になっている。
 カーテンが開いていて、昼下がりの光が射し込んでいた。


ウォーク

テス<

「なかなか好奇心を刺激する箱ですよね」
 まるでいまにも、箱を破壊して中身を見てみるかとでもいいそうな口調だった。
 “汚れを落とす”との言葉に、「しまった」とでもいうような顔をする。
 魔術師の言葉、「やぶ蛇」を思い出したりする。
 それでも、仕方なしに頷く。
「武装したまま風呂にはいるわけもいきませんしね。
 部屋に荷物を置いて、浴場に行くとしますか」


テス

アルバ<
 
「弓の見学もしたくはあるが…如何せん、眠いよ。休ませて貰おう」
 旦那の言葉に…おっと…小突く手をぽんぽんと叩いて返す。
 
「じゃ、またあとでな」
 出て行く3人の背に向けて声を掛けた。
 
ウォーク<
 
「ああ、悪いな。持てない重さじゃないが、見た目以上にある」
 目の前からひょいと箱を持ち上げたウォーク。興味が有りそうだ。
「…と言うか、だ。見るからに怪しいよな、これ」
 そんな箱を運ぶ依頼に喜んで飛びついた、俺も俺だが。
「ん、ああ、上がるか」
 ウォークに言われたとおり奥を目指す。
「ああ…ま、仕方あるまい。そもそも宿としての機能に重きを置いた施設じゃないしな」
 さて…おお、向こうか?
「…なに、風呂?」
 その言葉に、ふむ…と頷く。
 怪我人の居る所に、泥臭いまま寝るまで居座ると言うのも気がひける。
「そうだな、汚れを落とすだけでも借りておくべきか」
 荷物だけ部屋に降ろしていくか、とウォークに向き直る。


ノト

リゼル<

 彼女の苦笑につられ、笑みを浮かべながらうなづく。

「えぇ、機械弓が珍しくて・・・後で僕も触っていいですか?」

アルバ<

「では、行きましょう。」

 アルバに返事をしながら出口まで付いていく。

テス&ウォーク&イッサ<

 出口のところで振り返って、皆に声をかける。

「じゃあ、行ってきます。またあとで。」


リゼル

テス<

「うん、じゃ、ゆっくりしていてね。」

 町の裏にある丘に移動します。


ウォーク

アルバ<

「了解、リーダー」

テス<

 テスの前に置かれていた箱を代わりに持つ。
「おっと、なかなかずっしりとした箱ですね」
 興味深そうに箱を観察する。
「じゃあ、テス。あがるとしましょうか。
 おれたちの部屋は一番奥だそうですよ。ギルドも建物にあまりお金を掛けちゃいられないのは分かりますが、怪我人も何も、一つのグループは一つの部屋ってのはどうなんでしょうね。
 そうそう、頼めば湯も使わせてくれるんですが、テスはいかがです? おれはあんまり風呂ってのは好きじゃないんですが」


アルバ

テス<

「了解した」
 頷くと、ギルド員に言づてを頼む。
 ふと、テスが何やら釈然としないらしいようなのを見て、怪訝そうな顔をする。

リゼル&ノト<
 
「では、町の裏にある丘にでも行こうか。
 日暮れまでにはまだあるから、出入りの時間は気にしなくていいだろう」

テス<

「小一時間で戻ってくる。わたしたちのことは気にせずゆっくり休んでくれ」
 ねぎらうようにテスの肩を小突く。

ウォーク<

「テスとシーニアを頼むよ」

 そして、リゼルとノトを先導するように、出口へ向かって行く。


テス

アルバ<
 
「ああ…うん、そうだな」
 旦那の言葉に曖昧に頷く。確かに、これだけ準備が出来れば対応できるだろう。
 でも…じゃなくてな…ああもう、お人好しの集まりかここは?
「わかった、馬車の準備も頼もう。用心しすぎて困ることは無いか」
 提案に乗り、旦那の意見には出なかったもう一つの懸念を考える。
「魔術師を相手にする可能性も無くは無い、が…ま、そう気にすることもあるまい」
 馬車があればある程度魔術も阻害できる。そして、俺が対処法を考えればいい。
 わざわざ不安要素を与えることもない。皆に甘えるのだから。
 
リゼル<
 
「察しの通りだ」
 ひらひらと片手を振り、弓を持ったリゼルに応える
「休ませて貰うとするよ…すまないね。また、あとで」
 出て行く姿を見送る。


リゼル

ノト<
 
「あっ、これ、珍しいですか?」

 アルバレストを少し、持ち上げてみせる。

「つい先ごろ、鍛冶の師匠に作り方を教わった機械弓です。作ったのはよいのだけど、使えなくて・・・変な話でしょう?」

 ノトに苦笑してみせる。

アルバ<

「どこか町外れに行って試射したいですね。」



ノト

リゼル&アルバ<
 
「弓の訓練ですか?
 ぜひご一緒させて下さい。」
 言いながら自分の長弓を手に取る。
 そしてリゼルの持つアルバレストに気づき、少しめずらしそうな顔をする。



リゼル

アルバ<

「そうですか・・」

 自分もちょっとアルバレストを調整する自信がない。自己流の調整は止めることにした。

テス<

「テス、ちょっと休んだ方が良いみたいね。あたしはちょっと弓の稽古してくるから。また、あとで。」

 アルバの後について行くことにする。



アルバ

ノト<

「そのとおりだ。
 もしも敵が5人どころじゃなく、20人以上の規模だったなら、さすがに考えなくてはならないだろうが……」

テス<

「そうだな……」
 考える。
「わたしの考えとしては、相手が10人までなら、何とかなるんじゃないかと思ってる。手を合わせてみたところじゃ、練度もそんなには高くなかったからな。
 こちらには魔術師もいる。
 伏兵があったときの弓矢が厄介だが、幸い、弓使いも二人に増えた」
 と、ノトを見る。
「馬車でも出すとしようか? 確か、以前買った奴がある。
 シーニアの馬は一頭曳きの馬車くらいならひけたはずだ。
 遮蔽にもなるから、いざと言う時の射撃戦に有利だろう」

 テスの感じる限りでは、あまりアルバは魔法使いが敵に回った場合の脅威については認識がないようだ。
 もっとも、遮蔽は魔法に対しても有効なのは確かだ。
 見えない場所にはたいていの魔法はかけられない。

リゼル<

「もちろん、約束だ」
 と、うなずく。
 アルバレストについて問われて、一応覗いてみるが……・。
 困ったように頬をかく。
「すまない。使うほうはともかく、構造については全く分からない。
 真っ直ぐ矢が発射されるようになっていればいいんじゃないかと思うが……」

ノト<

「わたしとリゼルは、夜までの間で少し弓の訓練をするんだが、良かったら一緒にどうだろうか?
 疲れているのなら、無理にとはいわないが」



リゼル

 アルバの提案を考えて見る。
 リゼルとしては、敵が襲撃してくるのを待っているのは性格的に会わない。
ギルド員に、今回の依頼主についての情報をもらって、問い合わせてみると言う方法もある。
 しかし・・・まっ、どうでも良いや。それよりも、アルバに弓の稽古をつけてもらおう。ノトさんも弓使いなら誘おうかな?

アルバ<

「アルバさんの考えにお任せします。」
 アルバレストを持ち上げてアルバに見せる。

ノト<

 ノトにも視線を送る。

アルバ<

「ところで、弓の稽古なんですけど、お願いできますか?
 それと、このアルバレスト、少し気になる所があって調整したいのですけど、アルバさんの意見を下さい」



ノト

ウォーク<
 
 ノトにとってはなんだかよく分からない例えだが、どうやら褒められているらしい。
 無意識に首の後ろをポリポリかく。
 
 なんと答えていいか分からないでいたところ、アルバに声を掛けられた。
 
アルバ<
 
「あぁ、あなたが…アルバさん、よろしくお願いします。」
 シーニアのことを聞いて、先ほどテスと一緒に入ってきていた女性の姿を思い出す。彼女のことか。
 納得したように改めて、アルバにうなづき返す。
 
ALL<
 
「皆の言うとおり、その箱が狙われてるとしたら、襲撃はまたあるでしょう。
 でも、分かっていれば備えることもできますよね?」



テス

 何のことは無い、俺もまた収穫らしいものは無かった訳で。
 期待して待ってくれていたリゼル達に謝る。
 …しかし、どうしたものかな。
 
ウォーク<
 
「師匠、って俺か。…まったく、好きに呼べよ。まったくもう」
 また目元を押さえる。先生で我慢すべきだったろうか。
「ああ、この話が済んだら休ませてもらう。どうも扱いあぐねてな」
 さん付けで呼ばなくなったのは悪くないんだが。…いかん、口元が緩む。
 まったくもう。
 
アルバ<
 
「気にしなさんな。自分でまいた種だ」
 休めば、疲れも取れるだろう。それより…
「確かにな。こいつにどれ程の価値があるかはともかく、狙われているから依頼に出されたとも考えられる。…もっとも、俺達にとっては500Rdの価値だがね」
 魔術の線が消えた訳でもない。やはり、さっさと運んでしまうに限るか…って
「いや、な、旦那? 至極もっともな話なんだが、聞いた通りこいつは少しばかり厄介事だぜ?」
 …あれ、さっきも同じようなことを言った気もするな。
 そう、そこにいる人の好い弓使いのにいさんに。


アルバ

ノト<

 ウォークと親しげに話しているところへ、声を掛ける。
「きみも弓使いなのか。
 わたしはアルバ。一応、名目上、このメンバーのリーダーをやらせてもらっている。槍も使うが、弓も使える。
 あっという間に、メンツのバランスが取れたな。
 よろしく……実は、もう一人、シーニアという賢者がいるんだが。明日、紹介させてもらえるかな」

リゼル<

「箱、そんなものが」
 驚いて、テーブルの上を見る。
 なるほど、物々しい様相の荷物がある。
「確かに、それが貴重品か何かで、それがわたしたちによって運ばれているということが漏れたのなら――、それが魔法によって監視されていたのだとすれば、何もかも辻褄は合う」

 と、そこでテスが意識を取り戻す。
 説明を受け、残念そうに頷く。

テス<

「仕方ないさ。しかし、すまない。疲れさせたな。

ALL<

「まあ、魔法の手段によるものでなくても、いくらでも手段は考えられる。そこの親父は認めたがらないだろうが、どうやったって情報の穴は塞げないものだしな。
 リゼルたちが受けた依頼、正体がよく分からないが、だが依頼は依頼だ。もしもその品が狙われているのだとしても、まずは目的地まで運ぶことを提案するが、どうだろう?」



ウォーク

ノト<

「大丈夫、少なくともおれの魔術より役に立つのは間違いありません」
 からからと笑う。
「何しろ、おれは簡単な魔法の名前を喋ってみるくらいしかできないですからね。
 師匠によると、おれは目的がイメージできていないんだとか。そうでなくちゃ、魔法は使えない。
 実際その通りで、例えばおれは弓を持って弦を引くことはできても、いまいち的が見えないし、どの矢を選べばいいのか、その矢はどんな風に飛んでどう的に刺さっていくのか、どうにも掴めない」
 肩をすくめる。
「だから、ノトのように弓が扱える人物は無条件で尊敬するんです。よろしくお願いします、ノト」

 あ、ちなみに、と付け加える。
「いま、瞑想から帰ってきた、彼がおれの師匠です」

テス<

「そちらこそお帰りなさい、テス。
 休まなくていいんですか、師匠?」


テス

 ふっ、と一瞬、意識が途切れる。
 …ここまでか。
 ワンドの先をトンとカウンターに付け、広げた感覚の網を閉じる。
 杖を仕舞いながら、軽く目を揉む…何時の間にか、旦那達が到着していた様だ。
 
アルバ<
 
「…ああ、旦那。お疲れさん」
 ゆっくり片手を挙げる。
 様子を見るに、目立った収穫は無かったらしい。
 その所為か、俺のしていた事が気になるようだ。
「いや…あー、その、済まない。どうやら、俺達の受けた依頼に、あの襲撃が絡んできそうで、な」
 さっきまで視ていた宝箱を示す。
 
ウォーク<
 
「ん、お疲れさん…ああ、シーニアは休ませたがね」
 彼にも宝箱を示す。
「少しばかり、事情が変わってな」
 
ALL<
 
「…ふぅ。済まん、思ったより時間がかかった」
 宝箱を示しながら、一つ溜息を吐く。
「感じるところ、魔力があるのは一つ…この宝箱だ。
 箱が魔力を発してるのか、中身が問題なのか、そこまではわからんね。
 だが外部からは、少なくとも俺達を常時監視できるような、そんな魔術の感覚は受けなかった」
 一息に言って、もう一度息を吐く。
 やれやれ、少し疲れてきた。


リゼル

アルバ<

「それがですね、どうやら私たちが依頼を受けた品物が原因じゃないかって。それで、テスさんが魔法で監視されていないかどうか調べている最中です。
 詳しいことは全然わかりませんが,もし、魔法で監視されていたとすると一連の出来事のつじつまが合うんです。ひょっとするともっといろんなことが分かるかもしれません」

 テスの方を期待を持ってみる。


ノト

ウォーク<

 差し出された手に応えながらうなずく。
「ええ、そうです。弓が得意ですね。お役にたてるといいんですが。
 よろしく、ウォーク」



アルバ

リゼル<

 無念そうに頭を振る。
「まったく、ないといっていいな。

 奴らが主張するには、奴らは貧相な野盗のグループで、たまたま目に付いた我々を襲撃しただけなんだそうだ。
 だが、そんなはずはない。
 奴らの主張と装備にあまりに乖離がありすぎる。
 五人だけで細々と生計を立てている野盗が、町の近辺で、人数も装備も整っている冒険者を襲うことなど考えられない」

 それにしても、と、テスを示す。
「かれは何をしているところなのかな?」


リゼル

アルバ<

「えっ?・・はい、ちょっと調子を試しています。」

 アルバレストのことは後で相談してみよう。それよりも襲撃者たちの尋問結果が知りたい。

「あの・・、何か分かりました? 盗賊達を尋問して」


ウォーク

ノト<

「やっぱり!」
 破顔し、手を差し出す。
「おれはウォーク、ただのウォークです。見ての通り武器を振るうしか能がないですが、このメンバーの主要人物の一人です」
 自身の鎖帷子に短剣、広刃の剣を示して、冗談めかして笑う。
「よろしくお願いします、ノト。
 弓使いと見ましたが?」


ノト

テス<

 ノトはテスのやることを大体で理解していた。
 ここは余計な口をはさむところではないと判断して、黙っていた。
 しかしどうなるのか、じっと様子を見ていた。

ウォーク<

 そんな時に、初めて会う人間に声を掛けられたものだから、少々驚いてしまった。
 話している内容から、彼がテスやリゼル仲間だと理解するのに少し間が空いてしまった。

「……あ、あぁ、そうです。
 ノト・デートリアスといいます。あなたは?」


アルバ

リゼル&テス<

 ため息をついて歩いてくる。
「思いの外、長くかかった。
 あまり腕のいい官吏でなくて、時間をかけた割にたいした話を聞けなかった」

テス<

 ワンドを手に、念を凝らしている様子に気が付く。
(……これは、話しかけない方がいいのか?)

リゼル<

「早速弓の調整かな?」
 アルバレストをいじくっているのを見て、声を掛ける。


ウォーク

「いやー、参った参った」
 声を上げながら扉が開き、ウォークが入ってくる。
 アルバも続いてくる。

リゼル&テス<

「おっ、下にいたんですね。全員休んでいるかと思いましたよ」
 シーニアがいないことを確認して、そんなことをいう。

ノト<

 新顔に気が付いておや、という顔をする。
 テスと共にギルド員の前にいるころから、
「やあ、こんにちは。もしかして、同行者希望の方でしょうか?」
 そう判断して、きさくに声を掛ける。


GM

 技能判定:分類/弓術・機械弓・鍛冶(サブ)
  リゼル:技能ペナルティ-10% 成功!


 実際に機械弓を試し打ちしてみたときの感触から、幾つか直すべきポイントが思い当たった。
 ナイフで削ってバランスを整えるだけで、ちょっとした命中性能の向上が期待できる。
 もちろん、失敗してしまった場合は試みが逆効果になることも考えられるが。



リゼル

 アルバレストを分解するとを浸み込ませた布で丁寧に拭き始める。

 台座とベルト、板バネとトリガーは金属なので錆びないように特に丁寧にふき取る、次に照準器とあぶみ、弦は松脂で丹念になめす。

 再び部品を組み上げてアルバレストにすると、バランスを確かめるように片手で狙いをつけてみる。改良できる箇所はないかな?


GM

 魔力判定:分類/魔力の感知 > 周辺
  テス:自信あり


 テスは感覚の網を広げて、周辺の魔力を探った。
 燐光のように輝き、たゆたう魔力の光をテスは直接視野にとらえることはできない。それができるのは一部の特殊な感覚の持ち主だけだ。
 だが、魔術師は習練によって、魔力を感じ取ることができる。

 ――瞳を閉じると、どこかに明らかな魔力の存在感がある。
 それは、目の前にある箱が発しているものだ。

 だが、例えば外から、自分たちやこの箱に対してのばされた魔力の手のようなものは感じられない。
 


テス

ノト<
 
 薄情じゃない、か。確かにそうは見えない。
 …情に厚すぎて苦労を背負い込みそうだ。彼自身は苦労と思わないかも知れんが。
「…はは、そうか。そういうことなら、ありがたく受けさせてもらおう。
 こちらこそ、よろしく」
 湧いた笑顔を溢しながら、差し出された手に応える。
 
イッサ<
 
 イッサの話に耳を傾ける。
 そう、だな…確かに何らかの方法でギルドを監視していれば、楽に俺達を襲う算段が立てられる。
 …魔法、か…あ、リゼルがギブアップした。
「…俺の出番だよなあ」
 すい、と腰のワンドを抜く。
「視てみよう」
 意識を集中し、ワンドを頼りに広げて魔術の気配を探る。
 …問題はこのぼやけた意識だが…駄目なら、また後で確かめよう。
 それに視えないなら視えないで、それが一定以上のレベルを持った術者である可能性を残してくれる。


リゼル

「魔法による監視」
 リゼルには、そう聞いた瞬間から手が届かない領域の話になってしまう。肩をすくめてギブアップの仕草をする。

 アルバさんやウォードが戻ってくるのを待とう。近くの椅子とテーブルに歩いていくと、腰掛けてアルバレストの手入れを始める。そういうばアルバさんが機 械弓の手ほどきをしてくれるって言っていたな。手入れをしながら、ギルド員を中心とした会話に聞き耳を立てていることにする。


ノト

イッサ<

「得意な物…ですか?
 実は僕、大森林の出身でして、それで弓はそこそこ使えるんです」

 照れくさそうな笑顔で言いながら、イッサの視線に気づく。
 腰の剣を触りながら、なおいっそう照れくさそうに続ける。

「と言っても、弓だけでは間に合わなくて、剣も使うことが多くて。
 普段は隊商の護衛をやってるんですけど、人数を雇えない隊商も多いじゃないですか。
 弓だけに専念していられないって言うか…ね。」

 どちらかと言うと、人数の雇えないような貧乏な隊商にすすんで手を貸しているのはノト自身であることを知ってか知らずか。
 ノトの人のよさは筋金入りである。


ギルド員イッサ

リゼル<

「いや、ありえないことはないというか、なんというかな……」
 情けなさそうな顔でリゼルを見返す。

テス&リゼル<

「まず、テスがいったとおりの可能性が考えられる。
 どちらかというと2つの可能性だな。
 『誰かにとっての貴重品である』
 『大勢にとっての貴重品である』
 ということだ。
 テスがいったのは二番目だろうな。
 いずれにしても、この箱には何らかの価値があり、誰かによって狙われているってことだろう。
 問題は、なんだってお前たちがこの箱の運搬を引き受けたことが知れたのか、そっちだと思うね。
 基本的に何を、誰が、どこに持っていくのかなんていう情報は外には漏れない。
 それが、こうもピンポイントで、しかも出立直後に町の近郊で襲撃されたとなると、内部の情報漏れを疑うしかない。
 あるいは、このギルドの情報も自由にできるくらいの密偵がいるか……」
 そこまでいって、自分で気が付く。
「――それか、魔法によって監視されている可能性か」

ノト<

「奇特な奴だなあ」
 笑い出す。
「気を付けろよ、人がいい奴ってのは長生きできないことが多いんだからな。ま、あんまりにもいい人オーラが出てると、逆に厄介事の方から逃げていくもんらしいけどな」
 そういえば、と質問する。
 身につけている剣と、それから弓を見て、
「お前さん、得意な物は何だ?」


リゼル

 ふーん、やっぱり依頼された箱がいわく付きなの?
 ならば町を出て直ぐに襲われたところをみると、襲撃の依頼者はまだイ=サードにいるかもしれないな?
 それに関しては、アルバさんたちが拘束した襲撃者たちから何か情報を引き出して持ち帰ってくるかもしれない。
 ここで決着をつける必要があるかも・・・ひょっとすると・・・

イッサ<

「えーっと、それで、どういう風にありえないことはないのですか?」

 ギルド員に知っていることを話してくれるよう促す、そして彼が話し出すのを辛抱強く待つことにした。
 出来れば、アルバさんやウォードさんにも聞いてもらいたいが。



ノト

リゼル<

 リゼルの差し出した手を握り返す。

「よろしくお願いします。ありがとう。」

テス<

 テスとギルド員イッサとのやり取りから、だいたいの事情が分かってきた。
 その上でテスに言葉を返す。

「荒事は僕も嫌いですけどね。
 でも、目の前にそれがあるからと言って逃げ出すほど臆病でもないし、まして目の前で襲われそうな人がいるのに知らん振りするほど薄情でもないんですよ。」

 苦笑じみた笑みが自然とこぼれる。

「まあ、そういうことなんで。よろしく。」

 言いながらテスにも、握手のため手を差し出す。


テス

リゼル<

「いや、ね。
 俺達が持ってるもので心当たりなんていったら、こいつだろうなあ、と思ってな」
 ぽむ、と宝箱に手を置く。
 イッサはといえば…あー…これは、当たりか?

イッサ<

「計画があったかは分からんが、俺とシーニアの、どちらかといえば襲い易そうな二人が先行したところで仕掛けられた。それ も御丁寧に弓のバックアップつきでな。
 …そう、だな。装備の幾つかは頂戴したが、素人目にもそれ程ぼろい物じゃあ無かったよ。ああ、リゼルが着てる革鎧、それを見て貰えれば良い」
 イッサならば、見ればある程度の質を判断できるだろう。そう思いリゼルを示す。
 …俺の細工の腕は無名らしい。ちょっとさびしい…いや、見せたこと無いから当たり前だが。
 だが、代わりに見せたものはイッサには十分効果があった様だ。
「…まあ、そこまで情報がだだ漏れしていたとは俺も考えたくないがね。
 この箱がギルド…ここだな。ここに運び込まれたという噂さえ立てば…で、こいつがその手のお客を惹きつける代物なら、このギルドで依頼を受けたらしい、 ある程度の竜追いパーティに対して、誰かさんがちょっかいを出してくるのは…あり得ないとも言いきれないよなあ」
 しかし、そうなるとリゼルやシーニアは元より、アルバやウォークにもすまない事をしたな…と、つい溜息が出る。
「…とりあえず、対策は考えてみるが。はっは、そう深刻になることもあるまいよ。
 アルバの旦那達とも話す必要はあるが、請けたからにはシューレスクまで持っていこう。
 それに、俺はあの遺跡都市にいってみたいのさ」

ノト<

 さて、と呟きノトの方を見る。同行を申し出てくれたのだが…。
「有り難い。有り難いんだが…まあそういうことなんだ」
 頭をかいてるイッサに一度視線を遣り
「結構危ない橋になるかも知れんぜ? リゼルはともかく、俺は荒事はからきしだ」
 弓の威はさっき身をもって知ったんだけどな。
 だが、一緒に来てくれるなら実に心強い。


ギルド員イッサ

テス<

「あれだな? お前さんは、この品物は何か貴重な品か曰く付きの物か何かで、誰かに狙われていると。
 それで、お前さんたちがこれを持って出立するという情報が伝わって、出がけを狙い澄まして襲撃されたんじゃないかというわけなんだな?」
 ばりばりと頭をかきながらたたみかけるようにいう。
 やがてため息をついた。
「そんなことはあり得ないといいたいが、あり得ないことはないんだよなこん畜生」


リゼル

ノト<

「ノトさんは弓使いなのですか?パーティの人数は多いほうが楽しいですよね。多分、リーダーのアルバさんも同じ考えだと思います。
 こちらこそ宜しくね」

 嬉しそうにして、握手のために手を差し出す。

テス<

「どう思うかって、それ、依頼されているアイテムでしょう?」

 そう言いかけた所でギルド員の様子がおかしくなったので、どうなるのか注目する。


ギルド員イッサ

ノト<

「お前さんも好きな奴だな。そのうち苦労するぞ、きっと」
 襲撃について、顎髭をなでる。
「あり得るかもしれんな。原因が分からなければ何とも言えんが。テスたちが突き出したっていう捕虜が喋るかどうか次第だな」

テス<

「追われてたってのでもなかったってのは、……とすると、準備もしてあって、ある程度の計画に従って落ち着いて実行された襲撃だってことか。相手の装備もでたらめじゃあなかったんだな?
 組織から追放されて食うに困っているんならろくな装備もないだろう。武器しか持ってないとか、良くても剣と鎧だけってのがそういう奴らだな」
 ふむ、と呟く。
「お前さんの細工の腕がどうとかってのは当然ながらおれも初耳だから除外しておくとして――」
 とか言いかけたところで、テスが何やら取り出してきた。

「あ」
 ぽかんと口を開ける。
 頭を抱えた。


テス

イッサ<
 
「塔? そこまで期待されてたとは嬉しいな。
 …ああうん、ナイフなら手に入ったんだけどな」
 笑って返す。イッサにくたびれてると指摘され、その通りといわんばかりにカウンターに頬杖をつく。
 実際、またぼーっとしたくなってきた。
「…信じ難いか。確かに、俺だって想定外もいいとこさ。
 あいつら、追われてきたって感じじゃなかったしな」
 ふむ、と頬杖をやめ手近な椅子に座る。
「金目のものな…この細工の腕が盗賊にまで知れ渡ってるなんて事は……あ」
 あった。金目かどうかはともかく、心当たりといえばこれしかないものが。
 袋から両手で取り出したそれを、カウンターに置く。
「…リゼル、イッサ。こいつなんて、どう思う?」
 あちこち鋲を打たれた宝箱。
 さっき受け取ったばかりの、依頼品だ。


ノト

 テスの話と、それに続くギルド員イッサの推測を聞くうちに、ノトにもようやく状況が飲み込めてきた。
 確かに、何度も商隊の護衛でシノン街道を行き来してきたが、王都どころか他の大きな街からでも、一日と離れていない場所で盗賊に襲われたことなんてない。
 とすると、ギルド員イッサの言う話が現実味を帯びる。
 少し考え込んだノトの口から、誰にとはなしに言葉が出る。

「…とすれば、襲撃はまたある?」


ギルド員<

「それならそれで、お役に立てそうです。」

 同じようににっと笑って答える。
 深刻なのが苦手なのは、ノトも同じだった。

テス&リゼル<

「よかったら僕も連れてってください。
 弓の腕には少々自信があります。」

 そう言って軽く頭を下げる。
 この状況を放ってはおけない。
 ノトはそういう人間だった。


ギルド員

テス<

 顎の無精髭をさすりながら、話を聞く。
「やれやれ、期待はずれだな。とっくに指輪はおろか杖も塔も持っているんじゃないかと思ってたのにな」
 にやりとして拳をあげて見せる。
 とりあえず軽口に答えると、息をついた。

テス&リゼル<

「どおりで。お嬢ちゃんの方はピンピンしてるが、テスの方はくたびれてるしな。
 大体、あのシーニアの様子で荒事があったってのは分かってたが、人間相手か」
 頭をかく。

リゼル<

「ちょっとした事件かあ。参ったなこりゃあ」

テス<

「にわかには信じがたいがな。この国の街道警備は、見せ掛けだけのもんじゃないはずだ。大体、街道の5Kmごとに街道警備隊の詰め所があるんだが、全体に結構な人員が割かれているし、少なくとも王都周辺に限っちゃ定期的な見回りも多いし、騎士団の巡回もある。
 確かに、森の中に踏みこんじまったら何に会うかは分からんが、ここ最近じゃあ、この近辺で賊にあったって話は聞かん。
 どこぞで大規模な盗賊団が分裂でもしたかもしれんな。
 仲間にも追い出されて喰うに困った奴らが自暴自棄になって、町周辺で人を襲うってのもなくはないだろう」

テス&リゼル<

「だが、おれとしちゃあおまえたち、あるいはシーニアやアルバたちの方の個人的な物事に理由があるんじゃないかと推測するな。
 何故かっていうと、この辺りに盗賊団が来たという情報は入っていない。さらに、町の近くで襲うようなリスクを負ってでも欲しい何かをお前さんたちが持っ ているかっていうと、そんな風には見えんだろう? よくいっても通常の冒険者で、金目のものなんか持ってなさそうだしな。
 何か心当たりでもないか?」

ノト<

「おまえさんもこいつらと一緒に行っても安全かわからんぜ?」
 にっと笑ってちゃかす。
 イッサは、どうにも深刻ぶるのは性に合わなかった。


テス

ノト&イッサ<
 
 ミルクを受け取り、リゼルの自己紹介が終わってから口を開く。
「そうだな…と言っても、怪我人以外に大した事があった訳じゃない。野盗らしき奴らに襲われて、撃退はしたが出直しに戻ってきた…こんなところか。
 だがイッサは知ってるだろうが、俺達が出てから戻ってくるのに小一時間。王都にごく近い位置で襲撃を受けた。こいつは予想外で、出来れば情報も欲しい」
 情報収集を、と言ったリゼルを見ながら言う。
「それと、捕虜も取ったから別の仲間が突き出しに行ってるな。そいつからも、何か情報が出ればいいんだが」
 そこまでいって、ミルクに口をつける。
 
「…ふう。
 …ああ、そう、それから…悪いなイッサ、まだ指輪は無いんだ」
 空いた片手をひらひらさせながら、抑えていた軽口が飛び出てくる。


リゼル

 あっ、そうか、とりあえず自己紹介しなくちゃ。

ノト<

「わたしは、リゼルです。」

 慌てて、ノトを方を見て自分の名前を告げる。


ノト

 テスとリゼルから、声を掛けられる。
 言葉少なめに会釈を返す。
 今はあまり口を挟むべきではない。

 一体何があったのか?


テス

 イッサの指示を受け、別のギルド員がシーニアを案内していく。
これでひとまずは落ち着くだろう。
 しかし、あのにいさんが無関係じゃなくなるってのはどういうことだ?
 
ノト<

 イッサが紹介してくれる。
 …ああ、なるほど。どうやらもう一人、仲間が増えそうだ。
 続いてノトの自己紹介を受ける。
 
「俺はテス。よろしく。で、こっちが…」
 隣のリゼルを示す。
 彼女の自己紹介を待っていると、イッサが飲み物を出してくれた。
 ありがたい、さっきのミルクだ。


リゼル

ノト<

「ええ、ノトさん、今日は」

メガネの奥から覗き込むようにして微笑む。

「ええ、どうぞ、ご一緒に」

 親しみはこもっているが、ごく短く返答した後、テスの方を向き直り、話が始まるのを待つ。


ノト

ギルド員<

 今飲んだジュースにブランデーを入れてカクテルに…思わず想像してみて飲みたくなる。
「日が沈んだらぜひ」

 にっこり微笑みながら返事を返すのもつかの間、次々と入ってくる人々(テスやシーニア)と彼らのなんとなく落ち着かない雰囲気に、どういうことかとギルド員に目線を送る。
するとリゼルとテスがアルバの依頼を受けた二人だと聞かされ、ノトは目を丸くした。

テス&リゼル<

 期せずしてギルド員と自分のもとへ集まってくるテスとリゼルに手短に挨拶する。
「あの、僕はノト・デートリアスと言います。よかったら僕にも話を聞かせて下さい。もしかしたら、役に立てるかもしれません。」


ギルド員イッサ

ノト<
 
「あいよ。どうだ、うまかったろう。
 ……実はな、夜はそいつにブランデーを混ぜて出すんだ。アシュータ産の強い奴をな。そうやってカクテルにすると、飲み心地がいいんだが油断していると一発でつぶれる。
 機会があったら飲んでみな」

リゼル<

 見覚えのある顔が入ってきたのをみて驚く。
「あれ? おい」


 そこへ、テスと、治療の痕跡が所々に残っているシーニアも入ってくる。それを見たリゼルが近づいてくる。


テス<

「まったく、小一時間ぶりだな」
 軽口に応じるが、表情は険しい。
 何があった? と聞きたいところだが、
「分かってる。自由に使ってくれ」
 とりあえず差し出された木札を受け取るが、ちらと見ただけでろくに確認もしないで返すと、別の仕事をしていたギルド員に声を掛け、シーニアを部屋に案内するように告げる。
 それから、「治療師も呼んでこい」と言いかけ、それは不要だったことを思い出して肩をすくめる。

 テスがノトに声を掛けるのを見て、口を挟む。
「いや、こいつにも事情を聞かせてやってくれ。無関係じゃなくなるはずだ。多分な」

ノト<

「この二人が……」
 と、リゼルとテスを示す。
「アルバの依頼を受けた二人だよ。
 皆で出発したんだが、……見ての通り、何かがあったってことだな。お前さんも、今からでも参加したいってことなら、話を聞いておいた方がいいだろう」

テス&リゼル<

「……で、だ」
 ミルクと赤瓜のジュースとを出しながら、聞く。
「どうした。何があった?」


リゼル

「あっと、テスさんがやってきた。
 テスさんが状況をテキパキと説明するようだ。私も、テスさんとギルド員の所に行こう。」

 席を立って、テス、ノト、ギルド員の集団の所に入っていく。

ノト<

「取り込んでいてすいません。ちょっとした事件がありまして。」

 ちょっと浮いちゃったみたいなノトに、申し訳なさそうに声をかける。


テス

 リゼルに遅れてギルドに入る。
 
リゼル<
 
「悪い、遅くなった。馬を見ててな」
 腰掛けたリゼルに手を挙げつつ、カウンターに向かう。
 少し眠そうだったな。まあ、あれだけ動いてくれれば無理もあるまい。
 
ギルド員<
 
「やあイッサ、小一時間ぶり…んん」
 さっそく口をついて出てくる軽口を抑えながら、
「急で済まないが、ここの宿を借りたい。怪我人がいてね。
 事情は、彼女を休ませてからにしたいんだが…」
 と、後に居るだろうシーニアを示す。
「…っと、そうだ。ほい念の為」
 手続きは必要だよな、と呟き、袋から先程貰ったばかりの木札を差し出す。
 
ノト<
 
 イッサに頼んでから、改めて先客を見る。
 背の高い青年だ。だが、あまり威圧感は受けない。
 それに、何より
「…いいひとオーラが出てるな」
 その雰囲気につい視線が向く。リゼルも挨拶している様だ。
 
「…先客さん、悪いな。ちょっと、イッサ…ギルド員の時間をこっちにくれ」
 とりあえずだが、断っておこう。
 落ち着いたら、改めて声をかけようか。


ノト

 少しぼんやりしながら壁の張り紙を見ていたところに、扉を開けて誰かが入ってきた音が聞こえた。
 ドッカと腰掛ける音のした方にゆっくり、何とはなしに視線を送ると、メガネの女性とちょうど目が合った。
 何も考えてないところに会釈されたもんだから、状況を飲み込むまでほんの少し間が空いた。
 はっとして、慌てながら会釈を返すが、すでに女性はこちらを見ていない。どうやら連れを探しているようだ。

 思わず苦笑して、首の後ろをポリポリとかく。ノトが照れたりしたときのくせだ。
それから残ってるジュースを一気に飲み干して、カウンターにカップを置いた。

ギルド員<

「ありがとう。ごちそうさま。」


リゼル

 ギルドの扉を開けて中に入る。
 空いている席を探すと歩いて行き、ドッカと腰を下ろす。
 頬肘をついた姿勢で辺りを見回して、ギルド員を見つけるとおどけたような仕草で手を振って挨拶する。まあ、何で帰ってくることになってしまったか、説明する必要があるだろう。思わず苦笑する。
 そして、ギルド員の側にいる背の高い人物にも気づいて軽く会釈を送る。
「あーっと、テスさんは?」
 確か一緒にギルドに来たはずだが何処だろう。テスの姿を探す。
 さて、これから夕方まで何してようかな?まだ、時間はたっぷりあるし・・・何か眠くなってきたな・・・


ノト

ギルド員<

「え? おごりですか? いやぁ、ありがとうございます。」

 うれしそうに会釈しながらカウンターまで歩き、ジュースを受け取る。
「おいしそう……うん、この甘すぎない、さっぱりした後味がまたおいしい。」

 満足げにジュースを味わいながら、席には掛けずにウロウロしている。
 そのうち壁の張り紙の前で立ち止まり、眺めながら独り言にしては大きな声でつぶやく。

「せっかくだから、こういう仕事してみよっかなぁ…」


ギルド員

ノト<

「そうだな。しょうがない、飲み物一杯くらいはおごってやる」
 答えて、奥からカップをもってくる。
 前にリゼルにも出した、赤瓜の果汁を絞ったジュースだ。
「酒の代わりにするにゃあ軽すぎるかな」


ノト

ギルド員<

「ええ?! 二人も見つかったんですか? そうですか…。
 やっぱり朝のうちに来ればよかったなぁ。」

 残念そうに手を顎に、考え込む様子を見せるが…。

「まぁ、仕方ないですね。次に商隊の護衛の依頼があるまで待ちますか。」

 明るく切り替える。行くと決めれば一日でも早く出たいところだったが、神様が慌てるなって言ってるんだろう、多分。焦っちゃいけない、と自分に言い聞かせる。
 旅の準備を入れた袋と、武器であるロングボウを下ろしながら、再びギルド員に声をかける。

「せっかくなんで、何か飲み物頂けますか? 酒…はまだ、日が高いんで、酒以外で。」

 なぜか照れくさそうに笑う。


ギルド員

「お?」

ノト<

 昨日、仕事探しに来ていた青年を見て、声を上げる。
「参ったな、こりゃあ。
 お前さんのことをすっかり忘れてた。
 そうか、お前さんも結局行くことにしたのか」
 腕を組む。
「……ちょうど今から追いかければ間に合わなくもないか?
 ……いや、無理か。
 悪い。無理だな」
 はははは、と笑い出す。
「アルバの同行者、結局二人も見つかってな。
 小一時間ほど前に出ちまった」


ノト

 ギルドの扉が開き、背の高い青年が一人入ってくる。
 実はこの青年、昨日もこのギルドに顔を出していた。
 ノト・デートリアスと名乗っていた青年は、昨日も話していたギルド員を見つけると恐る恐るといった様子で話しかける。

ギルド員<

「あのー、昨日聞いたフラヌへ行くっていう…アルバさんでしたっけ。やっぱり同行させてもらおうと思うんですけど、間に合いますかね?」


GM

 一行は、出発しました。


アルバ

リゼル<

 もう一度、リゼルを見て頷く。
(なるほど。本当に力があるんだな)

テス<

「気にしなくていい。わたしたちも別件の依頼を受けているからな。こういう乗り合いを嫌いな奴もいるがね」

ギルド員<

「じゃあ、また、親父」
 手を振って、出て行く。


ギルド員 イッサ

テス<

「ああ、気を付けろよ」
 手を挙げて、送り出す。


テス

イッサ<
 
 置かれた箱に注目し
「おお。これは確かに怪しい…宝箱とはいえ、ここまで鋲を打つか」
 楽しそうに箱を見回す。
 続いて渡された木札を受け取り、袋に仕舞い込む。
「了解だ、ありがとさん。
 それじゃ、こいつも…っと」
 木箱も袋の中へ。持ち上げられたなら、
「よし…んじゃ、な。イッサ、色々世話になった」
 片手を軽く挙げ、別れの挨拶。

 小箱は見た目よりも重いが、テスに持ち上げられないほどではなかった。3.0Kgくらいだ。

アルバ<
 
「悪い、待たせた」
 イッサとのやり取りを終えて、彼の元に戻る。
「俺も本は嫌いじゃないけどね。
 学者かぁ…柄じゃないな」
 笑って応え、頷く。
「ああ、東門だな。
 じゃあ改めて、よろしく頼むぜ。アルバの旦那」
 アルバとリゼルが行くのに合わせ、後からついていく。


リゼル

「よっこらせっ」

 気合と共に荷物を背負い、ギルド員に軽く会釈すると、アルバの後をついてギルドを出て行く。
 アルバ以外のメンバはどんな人たちかな?そんな期待感を込めてこれからのことを考える。


アルバ

テス<

「まあ、仕方ないさ。
 それに、魔術は理論による奇跡らしいが、だからか、どうにも学者肌の奴が多いようだ。建物の中の方が居心地がいいらしい。わたしにはあまり分からないが」

リゼル&テス<

「じゃあ、行くとするか。
 他の連中は、東門の宿で待っている」



ギルド員 イッサ

テス<

「ああ、分かった。
 じゃあ、こいつだ」
 と、あちこちに鋲が打たれた木箱をカウンターの上に置く。
 一見すると、ただのチェスト(宝箱)でしかないようだが……。
「あと、これを持ってけ」
 次に、底辺が掌を広げたくらいの大きさの、長方形の木札を手渡す。
 依頼の名前と目的地、それからリゼルとテスの名前が書かれ、最後にこのギルドの紋章が日付と共に捺されている。

リゼル&テス<

「こいつを荷物と一緒に、シューレスクのギルドに届ければ依頼は達成だ。
 この木札はお前さんたちの身分を証明するものでもあるし、道中の宿を得るのにも必要だからな。無くすなよ」



テス

アルバ<
 
 目を丸くしてリゼルを見るアルバに頷き、
「凄いよな。見た目からじゃ想像できない力だ。俺なんて魔術使っても怪しいぜ」
 今回はついてるよ、うん。とご機嫌で呟いた。
 術士が少ないというアルバの言葉に腕を組む。
「そんなものか…導師についてれば、パーティに入ることなんてそうそう無いだろうしねぇ。
 いやぁ、冒険心が薄くていけませんな。
 ま、何だ。そのウォークくんのお勉強に役立てるなら、俺も荷物以上のことができるだろうさ」
 笑って話す。話がまとまり、アルバが出発の準備を訊いてくる。
「ああ、すまない。少し待ってくれ」
 彼に断りをいれ、立ち上がる。
 
イッサ<
 
 アルバからイッサに視線を向ける。
「お待たせ、イッサ。話がまとまった。そろそろ出ようと思う」
 話しながら、依頼品を受け取ろうと近づいていく。


リゼル

アルバ<
 
「私は何時でもOKです。」と言って荷物を引き寄せる。

 結局、イ=サードには半年ぐらいいた事になるのか。何か感慨深いな。


アルバ

リゼル<

「ほう」
 目を丸くして、リゼルと荷物を再度見やる。
「…………なるほど、興味深い」
 ややあってから、呟いた。
「見かけで判断するなとは常日頃思うことだが、参った。
 なるほど、君は本当に戦士なんだな」

テス<

「もちろん問題ない。魔術師がいればもちろん最高だが。
 数えた訳じゃないが、術士が一人でもいるパーティなんて10組に1組あるかないかって所だからな。魔術を少しでも使えるメンツがいるのは助かる。
 その学徒――ウォークの場合、かじった程度で、術を使えるわけでもないからな」

テス&リゼル<

「二人とも問題ないなら、ルートはそれで行くか。
 シルヴァードに留まるかどうかは、他のメンツにも聞いてみる。
 いつなら出発できる?」


テス

イッサ<
 
「魔境ね…ああ、わかってるさ。ただ、俺は方向音痴の気があってね」
 法螺吹きながら、ギルド員に手を挙げ返す。彼の名前を聞けば
「よろしく、イッサ・ウェロー。ここに戻ってくる楽しみができたよ」
 笑って頷いた。
 
槍の男<
 
 来客と見て、イッサとの会話を切り上げる。
「こんちは」
 こちらも軽く挨拶を返す。イッサからの紹介が終わり、声がかかれば
「野伏のアルバか。うん、よろしく。俺はシルヴァード経由で問題ない」
 頷いて、アルバの視線に不思議そうな顔をする。彼の質問に
「ん、ああ。魔術は使える…けど、ランク1の術だけだから、その学徒くんと大して変わらないと思うよ?」
 武器は使えないけど、と笑う。
「ま、そんなんだから俺一人じゃ不安でね。こっちも助かるよ」


リゼル

アルバ<

「ええ、シルヴァード経由の南下ルートで、私はOKです。出来れば、シルヴァードに少し逗留してもらえると嬉しいです。」

 アルバが見ている荷物を自分でも確認するように見て、
「まあ、これくらいまでの荷物でしたら自分で何とか運べますけど」
 片手でちょっと持ち上げてガチャンと音を立てる。


アルバ

ギルド員<

「なるほど。助かるよ」

テス&リゼル<

「話はそこの親父から聞いているのか?
 わたしが野伏のアルバ。ただのアルバだ。
 仲間は、他に二人いる。そいつらは後で紹介するとするか。
 目的地はフラヌだ。シノン街道を使い、城塞都市を通ってシルヴァードへ抜け、そこから南下していくルートを考えている。
 それで、問題ないんだったかな?」

リゼル<

「すごい荷物だな。それを一人で全部持って行けるのかい?」
 興味深そうに、武器や防具などが詰まった荷物袋を見やる。単純な好奇心で訊ねているようだ。
「それとも、馬か何かを連れているのか?」

テス<

 テスを見、その体つきと、何の武器も携えていないのを見て取ると、訊ねる。
「君は魔術師――か? もしそうなら助かる。
 わたしの仲間の一人は叡智の塔の学徒なんだが、魔術に関してはまだまだ学びはじめの見習いでね。小さな魔法も使えないらしい。書物よりも、どちらかというと、武器を使う方が得意だというくらいだ」


ギルド員

リゼル<

「ああ」
 頷くと、男の方を見て、

槍の男<

「見ての通りだ」
 質問に、男が見ている二人を示すことで答える。
「そこの娘さんがリゼル、ひょろいのがテス。お前たちに同行してくれるっていう奴らだよ」


リゼル

槍の男<

「今日は」

 挨拶を返すと、すかさずイッサの方を見る。

イッサ<

「この方がアルバさん?」


GM

 そこで、扉が開く。
 中に入ってきたのは、穂先を荒布でくるんだ槍を手にした、三十過ぎの男だった。日を浴びすぎて赤茶けた短髪の人間で、深みのある灰色の瞳に、褐色の肌をしている。中肉中背というよりは小柄な方だが、挙動に停滞がなく、猫のように歩く。

イッサ<

「どうだ、親父」
 ギルド員に声を投げかけてから、彼と話し込んでいる男女に目を向ける。

リゼル&テス<

 二人を、ギルド員に依頼していた同行者の候補かと推測しながら、
「どうも」
 軽く挨拶を送る。


ギルド員

テス<
 
 ふっと笑う。
「楽しみにしてるさ。なんだか、お前さんはどこに流れても、何があっても、平気な顔をして生きて帰ってきそうだな。流れすぎて、間違えて魔境なんかに踏み込むなよ。今のところ、魔境までの届け物の依頼なんざないからな」
 手を挙げて、それから、問われた名前に、
「あんまり聞く奴がいないんだ。
 ウェロー。イッサ・ウェローだ。ギルド員とでも、イッサとでも、適当にして好きに呼んでくれ」


テス

ギルド員<
 
「…おお。悪い」
 そうだった、彼にはまだ名乗っていなかったと思い出す。
「俺は、テス。…ああ、ちゃんと覚えといてくれ?
 次にここへ来た時は、術士卒業の魔術師が、また訳ありの仕事を請けに来た時だから」
 ギルド員の笑いにまだ指輪の無い手で応え、ふと思い立ちまた声をかける。
「俺、あんたの名前聞いてないぜ?
 おいギルド員…なんて、次に来た時、声かけ辛いじゃないか」
 にや、と笑う。何だかこの男には、軽口を叩いているのが楽しい、と思った。
 
「ああ、その対魔物戦線……って何だよそれ。
 焦らすねぇ? その剣王サマが動くってのは、事態も動くってことだろうに」
 ギルド員が心配してくれていることに気付いたのか、少し照れたようにカップを傾ける。
「…ま、俺は傭兵じゃないから、儲けの確実さも求めてないし。
 折角シューレスクまでの依頼を用意してくれたんだ。見物くらいはしてくるさ」

リゼル<
 
「いーって。責任持って報酬も貰えって、そう思ってさ。
 一緒にお仕事するんだから…あ、計算も頑張ったし」
 遠慮しない、とリゼルに応える。知り合いのことを口にするのを聞き、
「へぇ…って、シルヴァードに知り合いがいるのか?
 だったら構わんさ。ギルドからもああ言ってることだし、シルヴァード経由で行こうや。
 …あー、ま、確かにリーダー次第だが。選ばせてもらえるならシルヴァードで、な」
 笑って話し、後は件のパーティが来るだけか、と独り言。
 それまでは、残りのミルクで時間を潰せるだろう。


ギルド員

リゼル<
 
「…………さて?」
 合流予定のメンバーがまだかの問いに首をかしげ、耳を澄ます。
「まだ鐘はなっていなかったな?
 ふむ、もうそろそろ来る頃だと思うんだがな」


リゼル

ギルド員<

「はーい。では一緒に宅配します。お願いします。
 へぇ、サノット方面の道が悪いのですか・・貴重な情報ありがとうございます。助かります。でも、どうなるかは、きっとパーティリーダが状況に応じて決めてくれると思います。私は、それに従います。」軽く会釈してお礼する。

テス<

「いや、私は旅が出来れば良いだけですから、ちょっとでも報酬がもらえればそれだけで十分です。
 それに途中シルヴァードに寄るのでしたら、知合いの所に寄って必要なものを用立てることも出来ますから」

 養い親のシルヴァード貴族のところに寄って、今持っているアルバレスト、ショートスピア、短刀をホーバーク、レッグガーダーに交換してもらおう。ちょっ ぴり得な取引になるけど、私が鍛冶師になって初めて製作したものだから、それくらいのおまけはしてくれるだろう、へへっ。・・・もし、だめでもフラヌで自 分で製作すればいいや。

ギルド員<

「パーティメンバの方達、まだですかね?」


ギルド員

リゼル<

「そうだなぁ。でも、どうだろうな。城塞都市ピールからシューレスクに向かうにはサノットに向かうのが一番近いのは確かだが。あの辺りの道は整備されていないからな。
 シノン街道を使ってシルヴァードを通って、フラヌ経由で行くのもあまり変わらないかも知れないな。まあ、天候次第だ。整備されてないってことは、言わな くても分かるだろうが雨が降ればぬかるんで歩けたもんじゃなくなるし、橋もたいしたものじゃないから流されている可能性もあるってわけだ。
 この辺りの選択は、状況とその人次第だな。サノットにも用事を作るんなら、考える必要はないし、シルヴァードに用があるならそっちからいってもいいんじゃないかとは思うぞ」

テス<

「承った」
 にやりとして、手元で何か書き物を始める。
「リゼルと……あんた、名前はなんだっけな?」
 それから、質問に答える。
「遺跡都市か、確かに募集してるぞ。
 対魔物戦線に参加するのは……個人的にはあまり勧めたくはないがね。ここ最近、戦線も膠着していて、泥沼化の様相を呈しているからな。何か状況を打破で きる方策を司令部の連中が思いついてくれるならともかく、今の段階で参加するには危険があるかも知れん、――というのを、おれが言ったらまずいんだけど な。
 もっとも、ある筋によると、騎士王国の剣王殿が動き出したらしいからな、ある意味じゃ、狙い時なのかも知れないな」


テス

ギルド員<
 
「へえ。只の配達にしちゃ、結構な報酬だ…いいねえ俺、秘密大好き」
 ギルド員の提示した依頼に興味を引かれる。
「依頼人…んー…ともかく訳有りってことか。
 了解。その依頼、請けさせてもらうよ」
 そのまま流すには惜しい、面白そうな仕事だと引き受ける。
「そういえば、シューレスクって…あそこ今は義勇兵の募集もやってたよな?
 ついでに覗いてってみるか…」
 
リゼル<
 
「そいつはありがたい」
 リゼルの誘いに喜んで応じる。
「おー、見つかるといいなぁ。
 …ま、今の俺には、まだまだ触れるような代物じゃないって」
 冗談のような言葉に笑って、続ける。
 
「それじゃあ、二人で請けて報酬半々…あーっと、250Rdずつ…で合ってるか?
 勿論、リゼルが別の依頼を請けるのもありだけど…っと、それから」
 相手が先の予定を変更したらしいのを聞いて取り
「悪いな、気を使ってくれて。ありがとう」


リゼル

ギルド員<

「遺跡都市シューレスクですか・・・サノットを出発したら、シルヴァード経由じゃなくて、シューレスク経由でフラヌに到達するってことですよね。・・・ まっ、シルヴァードの恩人には後からゆっくり挨拶した方が気が楽かな。うん、シューレスク経由にしようかな。」

テス<

「テスさんもどうですか?
 シューレスクでしたらご一緒できそうです。そこは遺跡都市ですから、ひょっとすると逸失魔法の一つや二つ見つかるかもしれませんよ。」半分冗談っぽく言っているが、真剣な面持ちでテスを誘う。


ギルド員

テス<
 
「お?」
 呼ばれて、振り返る。
 今、ギルド員はまさにピンを持って、依頼の張り紙を何枚か張り出そうとしていた所だった。
「あるぞ。実入りがなくてもいいっていう条件なら、シルヴァードだったら、いくらでも。騎士王国に手紙は送りたし、隊商に預けるには不安だし、って奴はたくさんいるんだ。駄賃にもならないような依頼料だがね。
 フラヌでも、まあ、ないではないといったところか。

 普通、そんな条件は付けなくても、商隊の護衛なんていう仕事はいつでも募集中なもんなんだけどな。そこのリゼルにも言ったんだが、三日も待てば入ってくるだろうが。

 ――ふーむ。こいつはどうだかな」
 張り出そうとしていた紙に目を落とす。
「“荷物の配達”。遺跡都市シューレスクへ。報酬は500Rd。
 厳重に封のされた箱が、その荷物だ。中身については秘密ってことだったから、依頼人について調査をしていたんだが、結局、裏が取れなかった。調査が終わるまではと張るのを控えてたんだが……。
 こういうのはどうだ?」

リゼル<

「お前さんも。さっき言っていた奴らと同行しつつ、ついでの宅配とかもできなくはないだろうしな」


テス

リゼル<
 
「そうなんだよー。既製の魔術を覚えるにも、旅をするにもお金が要ってね。
 魔術はともかく、路銀ってのが、これがなかなか…」
 リゼルと同様に苦笑を浮かべる。次いで彼女の意見を聞き
「なるほどなるほど。やっぱりそう上手くはいかないか。
 むーん…師匠か。こと魔術に関しては、ここなら導師も見つかるんだろうが…。
 …ああ、いやね。この世界には、まだまだ埋もれてる魔術がいっぱいあるんだ。
 失われた古代の魔法とか、そういうの。
 そこら辺の忘れられてる代物を掘り起こしながら、ねぼすけ創造竜も見つけ出して起こしてやろうかな、と」
 今はそのための基礎修行中、と続ける。カップを持つと軽く息をつき
「やっぱりリゼルの言う通り、今は旅や仕事の中で力を付けていこうかね」
 ありがと、と笑ってミルクを飲む。
 
ギルド員<
 
 カップを置き、リゼルの引き出してくれた情報を聞く。
「は…ん。実戦向き、か…いろんな国の術も見れそうだな」
 この国で長く過ごす前に、まだまだ色んな国の魔術を見ておくのもいいかもしれない、と思う。
 立ち上がり、厨房にいるだろうギルド員に向かって呼びかける。
「なぁ、シルヴァード…できればフラヌに用のある仕事って無いもんかね?
 実入りは少なく…いやこの際なくてもいいや」
 あそこの張り紙に出せないようなやつ、と先程見た張り紙を指差し、ギルド員に尋ねる。


ギルド員

リゼル<

「そりゃあな」
 何か厨房の作業をしていたが、質問に、大きな声で答えてくる。
「なにせ、長年、魔物の攻勢にさらされてきたとこだ。
 詳しくは知らないが、大きなギルドこそないらしいが、都よりもよっぽど実戦的な魔法が開発されているって話だ。
 まあ、この国が魔術の総本山だってことは変わらないだろうが、独創的な魔法がフラヌにもあるそうだぞ」


リゼル

テス<

「そうですよね、お金は必要ですよね。」
少し苦笑して「でも、魔法の修行も出来て、お金も儲けられるような一石二鳥の仕事って結構見つけるの大変ですよね。私、半年ほどここで鍛冶修行を集中的にしてきたのですけど、もうそれだけで手一杯で、とてもお金儲けなんかしている暇ありませんでした。
 私、生まれつき魔法のことは全然だめなんですけど、何か特殊なものを覚えるためには師匠を見つけて修行することが必要かもしれませんが、普通に上手になっていくのなら、仕事のなかで経験を積んでいくので十分のような気がします。
 それともテスさんは、何か特別な師匠の下で修行しないと極められないような、特殊な魔法の修行をしたいのですか?」

ギルド員<

「フラヌでは魔術関係はどうなっているのですか?全然ないってことありませんよね。」


テス

リゼル<

「シルヴァード経由か…長旅だな。それに、フラヌの雰囲気ねぇ。
 俺には、戦士の街ってイメージの方が大きいけど。やっぱり魔術も盛んなのかな。
 …でも、そうだな。鍛冶師にとっても魅力的な街だよな」
 ミルクを飲み、一息つく。
「…ん、俺? ああ、魔術師…だね、うん。
 俺はその中でも、まだまだ修行中の術士。
 この国にも、魔術修行に来たんだ。何しろ大魔術師王国、だからな。
 まぁ…修行しながら、お金も少し稼げれば、とも思ってるんだけどね」
 笑いながら、ミルクをもう一口。


リゼル

テス<

「ええ、これから参加するパーティと一緒にシルヴァード経由でフラヌまで行って見ようと思います。特に目的がある旅ではないのですけど、フラヌの雰囲気と魔境の話には心が動かされます。」

「テスさんは、術士・・・魔術師さんですか?イ=サードでは、どんな目的をお持ちですか?」


テス

 おお、と目を丸くして女性の力業を見ている。
 手伝おうかな、とも思うが、長柄の代物まで片手で軽々と扱ったのを考えて思い直す。
 ――うん、ありゃ無理だな。絶対無理だ。
 
 ぱちぱち、と荷物を下ろす女性に拍手する。
 只の人間じゃないよなぁ、と思いながら女性を見ると、涼やかな笑みが返ってくる。
 女性の自己紹介を聞きながら、まっすぐな目に、少し焦った様に言葉を探して口を開く。
 
リゼル<
 
「あー…っと、力持ちだねぇ。頼もしい戦士さんだ。
…うん、よろしく。俺はテス。術士をやってる、まぁ半人前もいいとこだけど。
 邪魔してないなら良かった…に、しても。
 そう、戦士じゃなくて鍛治師か。それに、医術まで修めてるってのは凄いな」
 声をかけられて嬉しい、との言葉に少し照れながら、続ける。
「フラヌ…守護者の町フラヌ、か。それに魔境って、随分物騒な所に興味があるんだな。
 …ま、リゼルもそれだけ腕に覚えはあるんだろうけど。
 ところで、待ち人しながらフラヌの情報を聞いてたってことは、これから向こうに行くのか?」
 物騒な所、と言いつつ、「魔境」と口にする度に感じる懐かしさが、心を落ち着ける。
 
ギルド員<
 
「俺にも? ありがとさん…ん、いただきます」
 ギルド員の気遣いをありがたく、カップと共に受け取る。


リゼル

ギルド員<

「ありがとう」と言って果物の汁を受け取ります。

 ジュースを飲みながらテスの話を聞きます。


ギルド員

リゼル<

「はいよ」

 要望に応じて、先ほどの物と同じ果実の汁と、ミルクを注いだカップをそれぞれ持ってきて、二人のいるテーブルの上に置いた。

テス<

「あんたもいるだろう?」
 と、ミルクを勧める。


リゼル

 床に置いてあったガントレット、アルバレスト、ハルバート等の重い荷物を「ふんっ」と言う軽い気合と共に片手で持ち上げて肩に担ぐと、ガチャガチャ音を立ててテスの側まで歩いていく。普通の人間の女性では考えられないが、モノンドならではのわざだ。

 再びがちゃんと音を立てて荷物を床に置くと、ゆっくりとテスに向き直り、メガネ越しに大きな瞳で涼しげに微笑みかける。そして、何も含むところのない気持ちで、まっすぐにテスの顔を見据える。

テス<

「私、リゼルっていいます。みならいの鍛冶師、兼、みならいの医者で、これから色々なところを旅して歩こうと思っています。
 いえ、全然邪魔などしていませんよ。ここで、人待ちしていて暇だったもので、声をかけてもらってうれしいです。
 ちょうど、今、フラヌと魔境についてギルド員から情報をもらっていたところなんです。魔境に行ってみたいなあ、と思わず空想に耽っていました。」

ギルド員<

「すいません。もう一杯、ジュースもらえますか?」


テス

 空になったカップを弄びながら、ギルド員の記憶に残る「自分」を思う。
 女性が考え事を止めたらしいのを感じて目を向けると、丁度話しかけてきた。
 
リゼル<

「はい、こんちは。いっぱいお話して良いですよ。…や、考え事も邪魔しちゃったかね」
 タイミングの良さに、合いそうになる目を細めながら、すまなそうに答える。


リゼル

 若者から挨拶されて、はっと、魔境の空想のなかから目覚める。再び現実に戻って、さて、これからどうしようか・・・まだまだ、時間がありそうだし、ここはこの若者にお近づきになっておしゃべりして過ごすのも一興かな・・・

テス<

「あっ、こんにちは〜。ちょっとお話して良いですか?」


テス

ギルド員<

「ありがとさん」
 ミルクを受け取り、そっと口をつける。
「…うん、おいしい」
 一息ついてカップを置くと、指先でテーブルをトン、と押す。
 礼代わりに小魔法「空調」を発動させ、会話をし易くしようと試みる。

 風が無く、少し暑い程度だった室内が、ゆっくりと温度が下がり、心地よい室温になっていく。

リゼル<

「へえ、異境の地か…」
 ギルド員の言葉を受けて、再び女性を見る。
「俺も似たようなモンだ。何処もかしこも初めての異境だらけでね」
 ミルクを手にぶつくさ言いながら、こちらを気にしているらしい女性に笑ってカップを掲げ、また一口流し込む。
 
ギルド員<

 しばらくミルクを楽しんでいたが、ギルド員の言葉にカップを置く。
「うん? …いや、無いと思う。俺は、この国は初めてだし」
 魔法修行に来たんだよ、と付け加える。
 更に何か気付いたのか、楽しそうに手を組み、
「…でも、あんたがそう感じるなら、きっと、何時かの何処かで 逢ったことがあるんじゃないかな」
 そして、これだけは口の中で、
「…昔の夢とか」
 と呟いた。


リゼル

 ギルド員が青い髪に朱色の瞳を持った印象的な青年と話している。今までの人生経験の中でこのようなタイプの人物とはあまりかかわったことがないように思 える。引き続きフラヌのことを想像しつつ、これから参加するパーティメンバがギルドにやってくるのを待っているのだが、どうしてもこの人物のことも気にな るので、意識の端でギルド員とのやりとりを観察している。
 どうやら、こっちの方を見て、自分のことも話題になっているようだが・・・


ギルド員

テス<

 注文を受けて、ミルクを用意すると、渡しに行く。
「まあ、気にするな」
 リゼルの方を示す。
「なんだか、異境の地に想いを巡らせているらしいからな。
 ところで、お前さん、今までここに来たことがあったかな?
 一度、見た奴は忘れない方なんだが……なんだか、会ったことがあるような気がしてな」


テス

 ギルド員から微かな「夢」の感覚を得て、僅かな安息に浸る。
 注視されていることには気付かなかったが、ギルド員に声を掛けられると、ぼんやりしていた意識を引き戻す。

ギルド員<

「ああ…牛乳、牛乳が飲みたいな」
声につられて注文をしてから、ギルド員に視線を向け、その向かいの女性も視界に入る。
「…悪い。話し中だろ?」


ギルド員

「いらっしゃい」
 こんちは、との声に挨拶を返す。

テス<

 張り紙を見ている姿を眺め、ふっと、既視感に駆られる。
 何かの考えに夢中になっているリゼルを横目に、ぼんやりとしだしたテスを注視する。
(どこかで見たか……? いや……?)
 暇そうな様子に、気が付くと声を掛けている。
「よう、お前さん、何か飲み物でも飲むかい」


テス

 フードを下ろしつつ、ギルドの扉を開ける。
 
 こんちは、とカウンターに向けて声を掛け、壁の張り紙へと向かう。
 二枚の張り紙を見比べるが、自分では難しいと感じ、
 何か他の情報はないかと中を見回す。
 
 ギルド員が話し込んでいるのを見ると、少し離れた場所に席を取り、
 やがて暇そうにぼんやりし始める。


ギルド員

リゼル<

「ほう、それは面白いな。フラヌは遠いし、安全という言葉からも離れちゃいるが、面白いことは間違いないぞ。冒険の種はどこにでも転がっているしな。まだ、たいした規模のギルドはなくて、情報の手に入れ方にはコツが必要だろうけどな」


リゼル

 フラワースター族の冒険者!・・フラヌに行ったら是非探して見よう。彼も我々と同じように竜を追い求めているのだろうか?

ギルド員<

「へえーっ、フラヌの鍛冶って私の目指しているものと近いかも。見習いですけど、私も鍛冶師として、重量調整と長期耐用を極めて行きたいと思っています。益々、フラヌに行きたくなったなあ・・・」

 シルヴァードの貴族邸に挨拶に行っても早々に引き上げることにして、これから一緒になるパーティについて行ってフラヌまで行くことにしよう。ギルド員との対話中ではあるが、思わず、そのような考えに夢中になってしまった。


ギルド員

リゼル<

「はいよ」
 ジュースを、との要望に応じて、厨房にいったん下がる。出てきたときには、ガラス製の容器に飲み物を入れて持ってきている。
「赤瓜の果肉を絞ったジュースだ。さっぱりとした後味だな」
 なにやら講釈を垂れながら、飲み物を手渡す。

「フラヌでの鍛冶か。そうだな、とにかく実用性、それから耐久性を高める技術が発達しているようだな。おれは鍛冶は専門外だから詳しいことは分からないがね。
  あそこは、昔っから魔物の攻撃を受けていたから、鉄という鉄、銅という銅、武器や防具の材料といえるものはあっという間に底を尽いた。それでも、壊れた武 具を鍛え直したり、金属に戻して――鋼を鋳つぶしても、ろくな金属にはならないそうだが――製造し直したりしていたんだ。もちろん、他国や他の街からの補 給も受けていたが、いつも物資が届く訳じゃあない、魔物に襲われたり、天候に恵まれなかったりで、どうにもならないときだってあったらしいな。それで、獣 具とかいうのも発達したそうだが……。
 地底国のドワーフたちが守護者の町への協力を決めて、大規模な補給隊を編成するまでは、そんな状態だったんだ。
 そういうわけで、武具はとにかく材料を節約し、性能が良く、かつ、長い間保つ物を――ってな流れだな。
  医術……のことは詳しくは分からないが、治療の技を持っている奴は引く手あまただったろうな。フラヌが魔物のとんでもない攻勢にさらされていた間は、それ どころじゃなかっただろうな。今は落ち着いたとはいえ、場所が場所だし、未だにフラヌを襲撃してくる魔物の一団も多いらしいしな。
 あと、フラ ワースター族ってのが不思議なんじゃあなくて、その街で人間にとけ込んでいた、フラワースター族っていう魔物の種族である、不思議な冒険者がいた、という のが正しいな。本来、フラワースター族は智恵が高く、性質が邪悪で、奸智を用いて人族を罠に掛けるような魔物だからな。
 姿は、そうだなあ。人族 によく似ている。そいつはちょうどお前さんより少し高いくらいの身長で、少しずんぐりとしている。肌の色は黒く、髪の色は赤だ。そして、フラワースター族 は普通、蟷螂みたいな目をしてるんだが、そいつはどういう訳か、いつでもバイザー付きのヘルメットをしていてな、顔が半分隠れていたな。随分と、槍と弓、 防城戦の技に長けた奴だったよ」


リゼル

 フラヌのことを考えていて、どことなく上の空な様子で答える。

ギルド員<

「それでは、何か果物のジュースをお願いします。」

 そうかあ、フラヌって随分フランクなところらしいな。ドワーフの戦士がいるってことは鍛冶なんかも盛んなのだろうか。また、魔物との戦闘が絶えないなら医術を持ったものも必要となるだろうし・・・フラワースター族、智慧のある魔物ですって、どんな姿なんだろう?

「あのう、フラヌのことをもっと聞かせてください。フラヌではどんな分野の鍛冶が発達していますか?それに医術に対する需要なんてどうでしょう?不思議なフラワースター族ってどんな姿していますか?」


ギルド員

 リゼルが待つつもりになったのを見て、こちらも腰を据える。

リゼル<

「何か飲み物でもいるか?
 このギルド、酒場は経営してないが、宿屋でもあるんでね。厨房は使えるんだ」
 奥にある棚を示しながら聞く。
「フラヌかあ。そうだな、家柄とか出自とか、気にする奴は全くいないといっていいだろうな。というのも、おれもフラヌにいたことがあるから分かるんだけどな。あそこは、亜人だろうが何だろうが、それどころか“人族”でなくても、仲間であるなら受け入れるってところだ。
 “仲間”っていうのは、魔境に対して共に立ち向かうつもりのあるものすべてを含むのさ。そういや、面白い奴もいたな。魔境にはフラワースター族っていう、智恵ある魔物の一族がいるんだが、どう見てもその魔物の種族であるはずなのに、人族に与して魔物と戦う奴がいたんだ。
 最初は驚いたが、他のエルフやドワーフやらの傭兵と一緒になって酒を酌み交わしていたもんだ。
 ま、それくらい、度量の広い町だよ」
 リゼルが漏らした言葉に応じて、そんなことを言う。
 それから、後の質問に対して、
「シノン街道は、可もなく不可もなく、だな。
 特にこの界隈はだが。城塞都市のあたりは少し不穏で、群盗が出ることもあるって話だ。北西の、キートン南方領伯も、最近になって盗賊の一団に悩まされるようになったらしいしな。あんたたちみたいな冒険者の出番も増えるだろう。
  シルヴァード界隈の情勢は安定している。かの国、我らの心強い同盟国殿は治安維持に非常に熱心だからな。取り分け、シノン街道では窃盗の一つたりとも見逃 すまいという姿勢だ。ただ、あのあたりはここ最近ずっと雨が続いているらしい。道が寸断されることもしばしばだそうだから、そのあたりは気を付けるべきだ ろうな。
 あとは、噂……か。どうも最近、魔法の働きがおかしいという報告がある。あんたが魔法使いでないんなら関係ないんだが。
 それ から、そうだな。やけに南東の……城塞都市の南西側、大森林の東側から情報が入ってこなくなった。いや、何かが起きたというわけじゃなくて、何も起きなく なったってことだが。これまでは、盗賊が現れただとか、魔物が出没しただとか、場所が場所なだけに騒がしい地域だったんだが、急に何も起きなくなったよう な気がするな。
 さて、こんなところか?」


リゼル

 こちらから出向いて行っても入れ違いになる可能性があるならば、ここでしばらく時間を潰しながら待つことにしよう。ちょうど良いのでギルド員とおしゃべりして情報を入手することにする。

ギルド員<

「守護者の町フラヌかあ、まだ行ったことないですけど進取の気性に富んだところなのでしょうね。わたしのような家柄や親族のいない下っ端でも、実力しだいで評価されて皆さんに受け入れてもらえるのでしょうか・・・」

 思わず本音から話し始めてしまった。慌てて話題を転換する。

「えへん、ところで、こっちからシルヴァード方面へ向かうシノン街道ですけど、最近の治安状況はどうですか?何か特別な情報やうわさでもあったら教えてください。まあ、こういう情報収集も冒険者として必要な仕事の一部なので宜しく協力お願いします。」

 何か面白い話を今にも聞かせてもらえるような期待に満ちた顔でギルド員を見る。


ギルド員

リゼル<

「そいつは重畳」
 にっと笑う。
「呼びに行ってみるかい。待っていてもいいけどな。どのみち、奴らが旅立つときにはうちに寄ってくるだろうから。国境を越えて旅をするんなら、メンツが多いに越したことはないからって、奴らの方でも、あんたと同じことをおれに頼んでいたわけさ。
 宿に行ってみるんなら、すぐそこ、“鷹の宿”ってところに宿を取っているはずだ。といっても、出かけている恐れもあるけどな」


リゼル

 ふうーん、野伏と女賢者と“塔”の学徒か、それに前衛戦士系の私が加わればバランスの良いパーティ構成にはなる。方角もシルヴァードに行くので一致しているし、厄介ごともなさそうだ。このパーティに世話になろう。

ギルド員<

「そうですか、アルバさんに、シーニアさんに、ウォークさんの三人。はい、素晴らしいです。願ったり、適ったりのパーティです。是非、仲間に入りたいです。」

 嬉しそうに笑いながら、

「でっ、どうしましょうか?今日明日にでも出発するのですよね。場所を教えてもらえれば、私が彼らのところに出向きますが?」


ギルド員

リゼル<

「そいつらは城塞都市を越えて、シノン街道を通ってシルヴァードまで行き、そのまま南方の守護者の町に行くそうだ。
 アルバっていう境界都市出身の野伏の男がリーダーで、シーニアという女賢者と、“塔”の学徒の男ウォークの三人組だな。
 まじめな性格の奴らばかりだが、普段はそれなりに冗談も飛ばすような奴らかな。経験はそれなりに豊富で、確か二年は今のメンツでやっていたような気がするな。特段、性質の悪い奴らでも、あえて法を破るような奴らでもない。どちらかといえば、犯罪は嫌うような連中だな」


リゼル

 重たそうに背中の荷物をがちゃがちゃさせながらギルドの扉を開けて入ってくる。ギルド員を探して、近づいていく。そして、明るい声で話しかける。

ギルド員<

「南 東方面ですか・・・シノン街道を城塞都市ピールの方へ向かうのかな? 別に急いでいるわけではないので、シルヴァードとまるっきり逆の方向に行かないなら OKですよ。それよりどのような方たちなのですか? 詳しく話してもらえませんでしょうか。旅はやっぱり楽しい方が良いと思いますので」

 にっこりと笑って、ギルド員の答えを待つ。しかし、一人で生きてきたリゼルは、世の中にはどんな人がいるのか、一通り経験している。笑ってはいるが、自分にとって許容範囲の人たちなのかどうか、油断なく判断することは忘れない。


ギルド員

 独り言をいっているところに新客がやってきて、少し狼狽える。

リゼル<

「ああ、どうぞ」

 一言、応じる。

「シルヴァードにね、ふむ。ちょっとした特殊技能を持っている、要するに、冒険者なんだろう? それなら、どこでも雇ってくれるんじゃないかと思うが……ちょっと待っていてくれ」

 手元の巻物を繰りながら、

「≪火の砂漠の調査≫――≪鬼棍棒の入手≫――、なんだ、ろくな依頼がないな。ああ、いや、待て、依頼じゃなくても、同行者がいないかってことでもいいんなら、あいつらがいたか」

 リゼルに向き直る。

「どうだろうな、騎士王国まで行く隊商なら、今はいなくても三日、長くても五日も待てば出てくるだろうが、ちょうど、今日明日あたりに南東に出発するっていう奴らもいる。
 そいつらはおれも知っていて、信用できないってことはない。どっちを選ぶんでもおれは構わないが、どうだ?」


リゼル

 重たそうに背中の荷物をがちゃがちゃさせながらギルドの扉を開けて入ってくる。ギルド員を探して、近づいていく。そして、明るい声で話しかける。

ギルド員<

「今日は〜、ちょっと良いですか?」

眼鏡越しに涼しげな目で微笑みかける。でも、荷物を持つ二の腕には女性らしからぬ力こぶがはっきりと見て取れる。

「えーっ と、シルヴァードまで行きたいのですが、一緒に連れて行ってくれる隊商とか、パーティとかありませんか?勿論、只とは言いません。わたし、みならい程度に は医術と鍛冶が出来ますし、力仕事も嫌がらずにこなします。それに多少の荒事にも対処できます。どうでしょうか?」


ギルド員

 二人が立ち去ってから、ふと気がつく。
「そういえば、あいつ、図書館で大爆発を起こす必要なんてないってのは……。図書館の探索については知らないのか? 浅い階だけで調べるんなら確かに破壊の魔法は必要ないだろうが。だったら、許可もいらないしな」
 首をひねる。
「まあ、どちらでもいいか」


GM

 二人は、“矜持”の大図書館へ移動しました。


ギルド員

アーシュラ<

「いや、まあいいけどな。くれぐれも頼むぞ」
 アーシュラの背中に手を振る。

マリン<

「こちらこそな。まあ、また何かあったらいつでも来ればいいさ」


マリン

 アーシュラのことを心配そうに見ている。

ギルド員<

「はい、問題を起こさないように気をつけますので宜しくお願いします。」
 お辞儀をするとアーシュラの後をついてギルドを退出する。


アーシュラ

「ちっ、導師長のやつ忘れていなかったか。執念深いやつ。」
 ギルド員の話を聞いて顔をしかめる。

ギルド員<

「まっ、過ぎてしまったことは詮索しない、しない。まっ、それに図書館で大爆発を起こすような必要なんてありっこないしさ。
 ということで、他に何もないなら、あたしたち行くけど?」



ギルド員

アーシュラ<

「ああ、来たか」
 何か事務作業をしていた手を止めて、彼女を見る。
「待ってたぞ。あれから、すぐに使いをやって、聞いて来させたんだが……なんだ、おまえさんら、どちらも塔の出身者だそうじゃないか。おかげで、話は早く済んだらしい。
 ただ、調査の際に注意することがある。
 特におまえさんだな」
 ぴっ、と、アーシュラを示す。
「『く れぐれも、図書館内で危険な魔法は使うな』ってことだそうだ。なんか前科があるのか? 『もしも“爆砕”の呪文なんかを下手に使って本や遺跡に傷を付けた ら、わたしが直々に出向いて絞め殺してくれる』とのことだ。許可をくれたのは、王宮の宮廷魔術師様だな。叡智の塔の導師長もされている方だが……。
 で、だ。
 おまえさんたちの行動に責任を取るのは、ギルドの仕事になったから、よろしく頼むぞ」


マリン

 アーシュラに続いてギルドに入っていく。
 アーシュラの横でギルド員の話に耳を傾ける。


アーシュラ

 勢い良く扉を開けて、ギルドの中に入っていく。お目当てのギルド員を探す。ギルド員がいれば声をかける。

ギルド員<

「やあ、大図書館の調査許可だけどさ、どうなった?」


GM

 アーシュラとマリンは鷹の宿に移動しました。



マリン

 アーシュラの後ろ姿を笑いながら見ている。

ギルド員<

「お手数ですけど、宜しくお願いします。」

 ゆっくりとお辞儀をして立ち去る。


アーシュラ

ギルド員<

「へーい、それは都合が良いや。そんじゃ、お願い、ギルド経由で打診して見てよ。あたしたちは、疲れたんで、今日はもう鷹の宿に行くから」「明日の朝、また、ここに来るからね。」
 柄にもなく、ギルド員にウィンクしてみせる。

マリン<

「さあ、宿に行こう。そして、風呂入って飯だぁ!!うりゃゃ・・・」
 勢いをつけてギルドから出て行く。



ギルド員

マリン<

「け、賢王陛下にか」
 困った顔をして首を傾げる。
「参ったね。さすがに、そりゃあ確かなことは分からんな。まあ、“塔”には、つまり、叡智の塔には足をお運びになることは良くあるようだが、それにも公示があるわけじゃないからな。一番良いのは、宮殿に行くことだろうな」
 腕を組む。
「要 するに、大図書館の調査に許可をもらいたいってんだろう? それなら、許可がもらえるかどうかギルドで打診しておくぞ? その後、宮殿に出向いてもらえ りゃいい。普段なら潜れるもんじゃないが、今はちょうど、冒険者から組織された調査隊が入っていることだし、難しくはないだろう」



マリン

 しばらく考え込んで・・・

アーシュラ<

「うん、私としては、シルバァード、ミノッツって旅して回りたいのだけど、アーシュラはその前に何か調べ物があるのでしょう? 矜持の大図書館で。何か魔法関連の調査だったようだけど。私も神学関連の知識にもっと触れたいので図書館行きには賛成です。一緒に行きましょう。
 それで、矜持の大図書館の奥の方まで調べるとなると賢王セイフレイ様に許可してもらう必要があります。先ずセレフレイ様に会いに行きましょう。」

ギルド員<

「ちょっと教えて頂けますか。セレフレイ様に今お会いしようとしたら、何処に行ったら良いでしょうか?」



アーシュラ

 マリンの方に振り向いて話しかける。

マリン<

「さてと、あたしら、これからどうする? 風呂入って飯を食うのは当然として、次の活動方針ってやつだけどさ。」


ギルド員

アーシュラ<

「ああ、戻ったか」
 アーシュラを見ると、手を上げて迎える。
「その様子だと、無難に済んだようだな――おっと、詳しくは話すなよ。今のあいつらと関わる話は、おれはノータッチだ。元気でやってるならそれでいい」
 何か思わせぶりなことを言って、ため息をつく。
「あんまり、無認証の依頼を受けるもんじゃないぞ。普通よりもリスクが高いか、依頼が不透明だから認証できないってわけだからな。腕に自信があるなら止めないがね」

 - 長期シナリオ達成! -

アーシュラ:
 SP6.0
 IP4.5
 PP3.0
マリン:
 SP6.0
 IP4.5
 PP3.0



GM

 マリンは、今のところは、特に興味を惹くものを見付けられなかった。


マリン

 アーシュラに続いて竜追いギルドに入っていく。

「ふう、やっと戻りましたね。」
 感慨深げに溜息をつく。

 ギルド員との対応はアーシュラに任せて、自分はフラフラとギルドの中を歩き回って見る。

「何か面白いものないかな?」


アーシュラ

 扉を開けてギルドの中に入っていく。

「さてと、あたし達に依頼を出したギルド員はいるかな?」

 そう呟くと辺りを見回してギルド員を探す。

見覚えのある顔が、受付に座っている。

 ギルド員がいたら近づいていって挨拶する。

ギルド員<

「よっ! 久しぶり、戻ったぜ!」

 得意げにギルド員を見る。


GM

 アーシュラたちがギルドの中に入ってきた。


GM

 泉はシナリオ21「荒野の戦」に移動しました。



ギルド員<

「多分大丈夫です。戻ってきますとも。」

 小さな声で答えると水晶の示す西北の方角を目指して出発する。


GM

 ピィィィィィィィインン……
 澄んだ音を立てて、水晶が振り子になって揺れる。
 ゆら、ゆら、ゆら。
 ゆら、ゆら、ゆら。
 次第に揺れが収まっていき、西北の方向を指し示しながら、止まっていく。


ギルド員

泉<

「前金だ、持って行きな」
 小銭の入った小袋を渡す。
 中には、合金貨が6枚と、銅貨が5枚、つまり合計65Rdが入っている。
「無事に帰ってきたら残りを渡すから、ちゃんと戻ってきなよ」



ギルド員<

「ええ、分かりました。」

 しばらく、受け取った水晶を見つめていたが、おもむろにその鎖を持ってぶら下げると指先で軽く水晶を弾いてみる。水晶の示す方向を見定めてから出発することにする。


ギルド員

泉<

「オーケー。頼んだ」
 頷くと、水晶を取り出して、手渡す。
 不思議そうな表情を受けて、再度、頷く。
「そいつの鎖の先端を持って、水晶をぶらさげてみるんだ。その状態で、指先で水晶を弾く。当然、水晶は振り子のように揺れる。右に、左に、前に、後ろに。その動きをじっと見つめていれば、分かるさ。
 水晶は次第に円を描き、描きながら、だが、一つの方向に吸い寄せられるように動くはずだ。それが、相方のある方角だってことだ。そのうち水晶の動きは止まるが、止まったら、また指で弾けばいい。これで分かったかな?」



 エルフのトレニトさん、なかなかタフな男性のようだ。ギルド員の話を聞いていて感心してしまった。彼ならば多少のトラブルに巻き込まれていても一方的にイズミ自身が面倒なことになることは少ないだろう。イズミは依頼を受けることにした。

ギルド員<

「事情のほどはわかりました。では、今からトレニトさんに会いに出発します。
 水晶をお借りしてよろしいですか?」

 ぺこりとお辞儀をすると水晶を受け取るために手を差し出した。どうやって水晶を使うのだろうと不思議に思いながらギルド員を見る。


ギルド員

泉<

「よし、了解だ」
 にやりとして、頷く。
「まず、そうだな。その野伏について話そうか。この地方の治安維持に協力してくれている野伏は何人かいるが、今回、話にしているのは、ある特定の野伏だ。
 そいつは、エルフの男で、名前をトレニトと言う。
 華奢なエルフ族にしては、なかなか見事な体格の持ち主でな。弓だけではなく、槍も巧みに使うらしい。キムナード地方の出身だと聞いたことがあるな。あの、魔物だらけの不毛の大地で、人知れず魔物の駆逐に働いていたとか。
 こいつはちょっとあいつの過去に触れることだから詳しくはいえないが、ある理由でキムナード地方を出て、この町に来た。ここに来るまでもあれこれとあったらしいが、それについてはおれは知らない。
  とにかく、あいつは、自発的にロトッカ地方の荒野に出て、魔物と見てはその情報を集め、可能ならば自分だけで狩り出し、必要とあればうちに連絡を付けた。 その連絡を受けたうちは周囲に警戒を呼び掛け、冒険者を派遣し、魔物の群れを退治する。そういったことが何度か繰り返されて、あいつは、すっかりうちの英 雄になった。
 あいつはうちから報酬を受け取ることもなく、ただひたすら荒野に身を沈めていた。時たま、おれと一緒に酒を飲むこともある……特に何かを話すっていうわけじゃないが、最初と比べて打ち解けてきてくれているんじゃないかと思う。まあ、それは別の話か。
 あいつは大体、ひと月に一度は、ここに連絡用の鷹を飛ばしてくるんだ。そこになにも書いてなけりゃ、何も無し。何かが書いてりゃ、おれはそれに応じた手配をする。
 ところが、前回の連絡からひと月と、もう一週間も経っているのに、まだ鷹が来ない。おれとしちゃ、心配せずにはいられなくてね。
 そろそろ、誰かを様子見にやろうかと思っていたんだが、あいつの仕事柄な、下手な奴をやるわけにもいかないからな。あいつの居場所を探るための手段はあるにはあるが……。
 例えば、魔物の群れを相手取って、身を潜めて、遊撃戦をしているまっただ中に、がやがやと騒音を立てる冒険者を向かわせるわけにもいかないだろう? 足を引っ張るだけだからな。
 で、あんたに頼みたいってわけだ。
 あんたが受けてくれるってんなら、おれは、あんたに鎖の付いた水晶結晶を渡す。そいつは、あいつの持ってる水晶片と結びついていてな、あんたに、あいつの居場所を教えてくれるはずだ。
 あんたは、その手段を使って、あいつに会ってもらいたい。何も問題が無ければよし。問題があるなら助力をして欲しい。例えばあいつと一緒に魔物の群れを追い散らすなり、うちに戻ってきて助力を頼むなり、だな。
 報酬は、何事もなければ150Rdを渡そう。何かあれば、それに応じた金額を払わせてもらう。どうかな?」



 野伏から情報を受け取ってくるというのは、今の自分にはちょうど良い仕事かもしれない。

ギルド員<

「はい、その仕事やってみたいと思います。もう少し詳しい情報を教えてください。」



ギルド員

泉<

「なるほど、野伏や偵察兵に近いタイプか」
 納得して、頷く。
 泉の身体を無遠慮に見て、
「確かにな。言われてみりゃ小柄だし、身も素早そうだ。正面切って戦うというより、影に潜んで活動するような感じだな。
 ふぅむ、まさにお前さん向きの依頼があったんだけどな」
 ジェイミー・ラスキンの顔を思い浮かべて、頭を振る。
「もう、他の奴に回しちまったしな。
 さて、どうしたもんかな……」
 そこで、思いついたらしい。
「そうだ、あんた、それじゃあ、使いを頼まれてもらえるかな?
 ギルドと契約している訳じゃないが、自立して魔物の活動を見張っている野伏がいてな。最近の情勢はどうか、情報を仕入れてきてもらいたい。
 野伏っていう連中は、必要とあれば一日や二日、一週間どころか、ひと月でも山や森にこもって活動しているからな。一番、郊外の情報に詳しいんだが、いかんせん、その詳しい情報がこちらに入ってくるのはかなり後だと来てる。ここいらで、新しい情報を得ておきたいんだ。
 どうだい?」



ギルド員<

「わたしに得意なことですか・・・・」
 しばらく、考えこんでしまう。忍術のことを説明しても多分わかってもらえないだろう。
「わたし、魔法は使えません。それに前衛で戦闘をするようなことも必要最低限の範囲でしか行いません。どちらかと言うと探索とか調査とかが向いているみたいです。夜の闇にまぎれて、誰かの動向を調査したり、何かを取ってきたり・・・」

 泉は、そこで、ふと、盗賊同士のコミュニティみたいなものがあればと思った。もちろん悪いことをするのではなくて彼らが持っているだろう情報に興味があるだけだが。


ギルド員

泉<

「はあ、そりゃあ……」
 目をくるりと回す。
「ま、ギブアップしちまったのは仕方がないな。大体において、あの依頼は胡散臭かったしな。大丈夫だったかい? あ……そうか、あの二人は?」
 表情を曇らせて泉を見る。アーシュラとマリンは生還できなかったのだと思ったようだ。
 それから、依頼について考える。
「身体は元に戻ったんだな?
 ふうむ。良さそうな依頼か……。
 そうだなあ。あんた、得意なことってなんだ?
 魔法を使えるとか、力には自信があるとかだけどな?」



 前衛と聞いて、恥ずかしそうな表情を浮かべながらギルド員と話を続ける。イズミとしては、かなり話すことに努力が必要だ。

ギルド員<

「ええ、友人と一緒に遺跡の依頼に出発したのですけれど途中で倒れてギブアップしたんです。全然、前衛の仕事出来ませんでした。・・・それでしばらく静養していてリハビリも終わったので、ここに顔を出してみました。
 あの、ただ、ぶらぶらしているのも良くないので何か仕事がしたいのですけど、今の私に合うもの何かあるでしょうか?また、一人になっちゃったのであまりハードなものは厳しいと思うけど・・・」

 少し上目づかいで、おずおずとギルド員からの反応を待つ。


ギルド員

泉<

「おや、あんた……」
 目を丸くして、泉を見返す。
 どうやら、ちゃんと顔を覚えているらしい。
「あの遺跡の依頼を受けたお嬢ちゃんらについていった、確か、イズミっていう、何だ、前衛候補だったな?」



 竜追いギルドの中に入りながら、とりあえず小声で誰とはなしに挨拶する。
「今日は」

 このギルドには過去に一度来ているが、その時のギルド員らしき人物がいるかどうか周囲を見回してみる。ギルド員らしき人物がいたら改めて声をかける。

ギルド員<

「すいません。ちょっと良いでしょうか?」


ソード=ヨグ

ジェイミー<

「依頼人の意向だよ。正直なところ、依頼がある度にそんな品物を貸与していたんじゃ、どうしようもない。
 短剣を取り戻したいのは間違いないが、そのために、仕事を受けてくれる人が危険なことになるのは嫌だ、ということなんだ。それで、それを貸し出そうということになった」
 依頼人を思い出しているのか、優しそうな目をした。
「というわけで、任務は達成してもらいたいが、危なかったら、遠慮なく、目的のものも放り出して、撤退してきてくれ。
 君が無事に戻ってくること。これが、依頼達成の第一条件だ」

 そういってから、問われたことに答えていく。

「まず、別宅は、シナデア開発地区にある。城壁を広げて、中の住宅はこれから、というところだな。
 そこに、件の貴族の別宅がある。
 あそこには、金があって、かつ、あんな場所に家を建てる気になったものの家の他には、建材や小屋くらいしかないから、すぐに見分けはつくはずだ。
 その別宅が、その貴族の息子が、悪党仲間と一緒になって、堕落した行いをする根城になっている」

「そして、そこには使用人が最低でも三人、それから、貴族が用心のためにとつけた護衛が何人かいるようだ。人数は調べがつかなかった。
 この護衛には気をつけて欲しい。現役の騎士がいるはずだ」

 水を一口飲み、後を続ける。
「目的の短剣のある場所なんだが、『恐らくは別宅にあるだろう』ということくらいしか判断ができない。
 おれたちには君みたいな技能がなくてね。勘も働かない。だから、できれば別宅の構造とかも教えたいんだが、そもそも調べられないんだ。
 短剣の場所も、うちの魔術師の……なんていったかな、なんだかいう魔法で、大体の場所を感知しただけだからね。
 少なくとも、今のところは、別宅のあたりから、短剣は動いていないらしい」


ジェイミー

ソード=ヨグ<

「へぇ、この指輪にそんな魔法がねぇ〜‥」
 差し出された二つの品をしげしげと眺める。

「そんじゃあ遠慮なく受け取っときます。
 しっかし、こんなモンまで貸して貰えるなんて至れり尽くせり‥って奴だよな。
 ‥まあ、こいつに頼るような"緊急事態"になんなけりゃ それに越したことは無いけど」
 ニッと人懐っこい笑みを浮かべると、指輪と玉を受け取って懐に仕舞い込む。

「んで、そろそろ詳しいこと教えて貰ってもいいかな。
 目的の別宅の場所とか、使用人は何人いるのかとか、仕事に必要な事、色々さ」


ソード=ヨグ

ジェイミー<

「ああ、いや。そういった魔法があれば便利なんだが、残念なことに、おれたちは持っていないんだ」
 真っ黒な指輪と、同じく真っ黒な玉を手に載せて差し出す。
「この指輪をはめて、その手で指を鳴らすと、その瞬間に、この玉のところに転送される。
 つまりこいつは、君の緊急脱出用のアイテムだ。
 ただ、魔法の品を身に付けているときに使用すると、機能に障害が発生するらしく、まったく見当違いの場所に転送されるそうだ。うちの魔法使いによるとな。
 だから、目的の短剣を入手した後だと、使えない。いや、つかるんだが、短剣と一緒に使うことはできない。
 もしも潜入してみて、急いで引きあげる必要があったときなどに使って欲しい」


ジェイミー

ソード=ヨグ<

「ああ、大丈夫。そんな値打ちもんは持ってないから、俺」
 魔法の品は持っていないか、との問いに両手をひらひら振りながら答える。
「んでさ‥その渡しときたいものって、もしかして目的の短剣を探し出す為の何かって奴?」



ソード=ヨグ

ジェイミー<

「分かっている」
 ほほえんで、手を差し出す。
「もしそこにいる男が信用できない人間を紹介するようなら、おれもここには来ていないよ」

 さて、と口を開く。

「とりあえず、仕事に入る前に君に渡しておくものがあるんだ。
 その前に聞いておかなければならないことがあるんだが、君は魔法の品を身に付けてはいないだろうか?
 もし身に付けていたら、仕事に入る前に、できればこのギルドの預り所にでも渡しておいてもらいたいんだが」


ジェイミー・ラスキン

ギルド員<

「ちょ‥そういう事を言うかな?依頼人の前で‥」
 それってば軽く営業妨害だぜ、と口を尖らせて抗議をしかけるが、当の依頼人の男性から挨拶をされてそちらに向き直る。

ソード=ヨグ<

「ああ‥えっと、よろしく」
 これまで余り受けた事の無い自身への丁寧な扱いに、少々面食らってぎこちない挨拶を返してしまう。
「そこのおっさんはあんな事言ってるけど、俺、仕事はキッチリやる方だからさ。安心してよ」
 気を取り直すように咳払いをすると、そう言い加える。


ソード=ヨグ

 わざと鈍く作ってある刃物のような気配をした男性は、穏やかな視線をジェイミーに向ける。

ジェイミー<

「君が今回の依頼を受けてくれたジェイミーか。
 よろしく頼む」


ギルド員

 しばらくしてから、中年の男性を連れて戻ってくる。
 男性は、がっしりとした体つきの人間で、身のこなしと目の配り方などから、経験豊富な戦士の雰囲気をジェイミーは感じ取った。

ジェイミー<

「お、いたか。前金だけかっぱらって逃げたりはしなかったようだな、感心感心」
 何かの仕返しでもするように、からかいの言葉を投げる。
「こいつが代理人のソード=ヨグだ。まあ、代理人というか、さっきもいった、そのお嬢さんを守っている連中の一人だな」


ジェイミー・ラスキン

ギルド員<

「ああ、でもおっちゃんがそれ言っちまうと、ちーっと怪しいけどね、‥って冗談冗談!」

 笑顔でギルド員を見送ると、手渡された金袋の中身を数え始める。
「準備っつても仕事の道具は揃ってるし‥
 他人様の屋敷に忍び込もうって時にそんな大荷物ってのもなぁ、特に必要ねぇか」
 前金の額を確かめ終わると、大きな伸びと欠伸を一つし、ギルド員が戻ってくるのを待つ。


ギルド員

ジェイミー<

「ああ、助かる」
 厳つい顔に、微笑みを浮かべる。それから、照れたように、
「依頼人のお嬢さんは、お前さんよりも年少だからな。おれはどうも、子供を放っておくことができなくてな」

「さて、じゃあ代理人を呼んでくるから、少し待っていてくれ。
 先に前金を渡しておくから、何か準備があるなら、今のうちにしておいてくれ」
 と、80Rdを渡し、席を離れた。


ジェイミー・ラスキン

ギルド員<

「その辺は抜かり無しって訳だ。
 さっすが、良い仕事してるねおっちゃん」
 打てば響くようなギルド員の快答に、深刻そうな表情が一転して笑顔に変わる。
「おっけー、そういう事ならその仕事、俺が引き受けさせて貰うよ」


ギルド員

ジェイミー<

「それについては問題ない」
 自分の腕を叩いてみせる。
「そのお嬢さんは既にこの町を離れているし、今は、その亡父の仲間だったって奴らが面倒を見ているから、おそらく、問題ない。
 そいつらは盗みに入るだとかの器用なことはできないが、荒事については信用できる奴らだからな」


ジェイミー・ラスキン

ギルド員<

「金満貴族が貧乏人相手に盗っ人の真似事かよ、
 ‥ほんと、救いようのねえ馬鹿息子だこと」
 額に皴を寄せて腕を組む。
「でもさ、依頼を受ける前に聞いといていいかい?

 俺がうまく俺がその短剣を取り返したとして、
 短剣がそのお嬢さんのところに戻ったのが馬鹿息子に
 知れたら、ヤバい事になるんじゃないの?
 
 ――やっこさんにも後ろ暗い事情があるから、お上に
 訴えて、なんてことはしねーと思うけど‥
 そんな奴ならチンピラ雇って強引に奪い返すくらいは
 やりかねないぜ?」


ギルド員

ジェイミー<

「報酬はちゃんと出るさ、もちろん。
 仕事の内容は……まあ、受けてくれると分かるまではあまり詳しくは話せないから、適当にかいつまんで話すぞ。
 断片的にな」
 と、前置いておいてから、話し出す。
「お前さんに忍び込んでもらいたいのは、貴族の家だ。
 こいつは、けっこうな権力を握っている貴族だ。
 その貴族には息子がいて、これがまた、出来の悪いどら息子だ。頭は良いらしいし、教養もあるそうなんだが、我が儘な奴だし、我慢てものを知らないようなんだな。
 欲しくなったら何でも手に入れようとする。これが俺たち庶民には嬉しくないことに、そいつは知恵が回るし、決断力も実行力もあるもんだから、けっこうな無理も通っちまうんだ。何より、金があるしな。
 そんなどら息子がとあるお嬢さんから盗んだ品物を、取り返してもらいたい。

 で、そのお嬢さんが依頼人だ。

 お嬢さんは冒険者の遺児って奴でな。親父さんが腕利きの冒険者で、遺跡を発見しちゃあ潜ってたらしいんだが、とうとう最近、死んじまってな。
 稼ぎは全部、生活費と冒険の準備にあてられてたらしくて、ほとんど残っちゃいない。古代人の遺物もなにもな。ただ、その親父さんが若い頃に発掘して、それ以来ずっと愛用していたっていう、短剣だけがあったってな。
 で、盗まれたってのが、その短剣さ。
 盗んだのは間違いなく、あのどら息子だ。

 正面から行っても知らない顔をされるし、公的機関に頼ろうとしても、相手は貴族だからもみ消されるか、下手をすれば依頼人自身が危ない。なら、裏から攻めるのが一番だ。
 で、短剣を盗み返してもらいたいってな。

 依頼人は冒険者の遺児、若いお嬢さん。潜入先は、イ=サード王都のうら寂しい場所にある、どら息子の別宅。目標物は古代遺物の短剣。
 報酬は、前払いが80Rdで、成功報酬が250Rdだ。
 どっちにしてもまっとうな仕事じゃないから、ギルドは仲介には立たない。おれ個人の紹介ってことで、さあ、どうする?」


ジェイミー・ラスキン

ギルド員<

「悪党を懲らしめて人様に感謝されるってぇのは、悪くない話だよな。
 あ、勿論ただ働きっつーなら話は別ね。」
 聞かされた仕事の内容に、おどけた笑顔を浮かべながら軽口を返す。
「とりあえず、もうちっと詳しく話し聞かせてよ。」


ギルド員

ジェイミー<

「まあ、なくはないってところだけどな」
 どちらかといえば、調べたのはジェイミーの信用とか身元に関することだったが。
「まあ、あれだ。とりあえずは任せても問題ないだろ」
 なんだか気が重たそうにしながら、巻物を取り出した。
 羊皮紙で作られたもので、いろいろな書き物がされているらしい。
「お前さん、人助けに興味はあるか?
 非合法をされた人間からの依頼で、非合法をした相手に、非合法で報いるってな。
 まあ、分かりやすくいっちまえば、盗みの依頼なんだが」


ジェイミー・ラスキン

 日も高くなったというのに、やや眠たげな表情で宿屋側の店 舗から続くドアを開けて部屋に入ってくると、受付を覗き込み ながら声を掛ける。

ギルド員<

「おはようおっちゃん、昨日の話だけど‥
 あれから何か情報はあったかい?」
 昨日の夜半に仕事を探してギルドを訪れたが、目ぼしい依頼が無いので(掲示板に残った依頼は彼向きでは無かった)
 宿屋に一泊する間に、何か他に仕事の口は無いか調べてもらう手筈 になっていたのだ。



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